クリスタル
レゲンは二階をくまなく探索し終えると一階にいるカレッジやリケイルたちと合流するため来た道を戻っていた。
「おかしい・・・敵と一人も出会わない。ここはハズレということか」
レゲンは急いで合流するため走り出そうとしたその時。
ヒュンと風を切る音が近づいてくることに気づいた。
身の危険を感じたレゲンは横の窓を突き破り、外に飛び出した。
そして外に落下する瞬間屋敷の中を見てみると、光の直線が先ほどまでレゲンがいた場所を通過する。
先程まで聞こえていた音の正体だ。
地面に着地すると屋敷の窓を突き破り、黒い鎧をきた男が着地する。目元に大きな三番傷がある、長槍をもった男。
「防御しなかっただけ、見事と褒めておこう。レゲン・ロックダイス」
「何者ですか?」
レゲンの問いに長槍を構えると男の目が怪しく獣のようにギラついて見える。
「盗賊騎士団副騎士団長補佐カロナだ。貴様のオリジンシリーズ頂戴する」
カロナの自己紹介にレゲンは残念そうに手を顔に当てやれやれという様子をみせた。
「副団長補佐・・・どうやら僕は本当にハズレを引いたようですね」
「ぬかせ!!」
カロナは槍を前方に着いた。しかし、レゲンとは距離が離れているため槍の先端はレゲンに届かない。
だが槍の先端から光の直線が発射された。
先ほど屋敷の中で見た光の直線そのものだ。
レゲンは地面を軽くタンっと蹴ると、土が盛りあがり土の壁を形成する。
だが光の直線は土の壁を針が布を突き刺すようにいともたやすく貫通した。
貫通した光の直線はレゲンの右肩を二センチほどえぐった。
土の壁がボロボロと崩れ、レゲンは右肩から血をこぼすが眉ひとつ動かさない。
「ハズレ?この貫通のレプリカをもつ俺を倒してから言いな!!」
レゲンはため息をつくと腰に下げたクリスタルを抜刀した。
月夜の光が何度もクリスタルの中で乱反射し水晶のような剣をキラキラとまぶしく輝かせる。
「あなたたち盗賊騎士団は全てハズレですよ。あたりは・・・アイスノックさんのみです」
レゲンの挑発にカロナは青筋を立てる。
「てめぇをぶっ殺して、俺が当たりだと証明してやるよ!!!!」
カロナが再び槍を構え、貫通のレプリカを発動されようとするが、それよりも早くレゲンがクリスタルで斬りつけた。
「グバァ!!」
カロナは斬られた傷口を抑えるが血が滴ってこない。斬られた部位から赤い結晶が飛び出すように固まっている。
いや正確には違う。固まっているのは傷口ではない、血液だ。
「僕のクリスタルは液体を結晶化させる・・・君に出血死はない」
カロナは傷口から手を離すと大声で笑い出した。
「ハッハッハハハァ・・・出血死はない?お前の武器の方がハズレじゃねぇか。それじゃあ俺は殺さないぜ!!!」
カロナは再び槍を構え前方に突き出す。そして光の直線がレゲンに向かい伸びていく。
レゲンに光の直線が直撃した。
だがレゲンは光の直線を片手で払いのけるように弾いた。
「はっ!?」
カロナは悪化に取られるがすぐに弾かれた原因に気づいた。レゲンの手が茶色に変色している。
土魔法で手を硬化させ弾いたのだ。
「バ、バカな!?貫通のレプリカだぞ。弾かれるわけがねぇ」
「魔力をこめる量を少し増やしました。やはり君はハズレでしたね」
そういうとレゲンはカロナと距離を詰めカロナの両腕をクリスタルで切断した。
「ギョニァァァァァァ!!!!」
カロナは断末魔を上げるが血は吹き出してこない。 傷口の血液が結晶化しているのだ。
レゲンは氷のように冷たい目でカロナを見ながらクリスタルを喉元に突きつける。
「出血死はありません・・・痛みによるショック死か、心臓を一突き刺されるか・・・首を切り落とされるか、選ばせてあげましょう。あなたの言うハズレの武器でね」
カロナは無くした両手をあげるように、両腕を天にあげ、降参のポーズをとる。
「じ、慈悲を・・・」
カロナの顔は先程までの自信満々の顔とは打って変わって涙を浮かべ、恐怖に包まれる。
まるで捕食される前の小動物のように。
レゲンはただクリスタルを喉元に突きつける。ただ表情を変えず、冷たい目で見下しながら。
「武器を抜いた時点で、あなたに降参の選択肢はありません。戦場で命乞いは通じませんよ」
レゲンは淡々と告げる。まるで処刑人のように、体温を持たない人形のように、ただひたすら冷たく。