勇気の剣
怪物へと変化したパストの攻撃をカレッジは剣で受け止める。
獣ような爪は、剣にも負けないほどの切れ味があり、建物や瓦礫を真っ二つした。
カレッジはそんな、爪を剣で受け止めるばかりだった。
反撃しようとはせずに攻撃を受け止め、逃げるように距離を取る。
ひたすらそれを繰り返している。
斬ろうと思えば斬れる隙もあった。
しかし、カレッジは斬ろうとはしなかった。
いや、正しくはしなかったのではない。できなかったのだ。
カレッジにはパストを斬る勇気がなかった。
攻撃を受け止め逃げる。
まるで問題を先延ばしにするように――
時間が経てば解決してくれると投げやりに考えているように――
しかし、そんなことは永遠に続くことはなかった。
「ツッ!!」
パストの鋭利な爪がカレッジの身体を切り裂いた。
カレッジの身体から血がダラダラと垂れてくる。
しかし、カレッジはそれでも反撃しなかった。
「いい加減にしろ!!カレッジ」
レットの言葉が突如として、響き渡った。
「パストを救うにはもうパストを斬るしかない。それがわからないわけではないだろう」
「わかってんだよ!!斬らなくちゃいけないことぐらい。だけど俺にはできない・・・パストを斬れないっ」
カレッジは受けた傷を抑えながら苦悶の表情を浮かべた。
「いい加減にしろ!!お前がパワスから受け継いだことを思い出せ」
「師匠に・・・」
カレッジは自身の手に持つ白と黒剣を見た。
先代から受け継いできた剣。
剣と共に受け継いだ信念と誇り。
「カレッジ。お前が本当に斬りたいものはなんだ?」
レットの言葉にカレッジの剣を握る力が強くなった。
「俺が本当に切りたいものは・・・・・・ない!!」
すると手に持った白と黒の剣がまるで吸い寄せられるように、一つになった。
そして手の中には灰色の一本の剣が握られていた。
「それこそブレイドの本当の姿だ。本当に斬りたい物を理解したい時がブレイドの本当の力を使える」
カレッジは自身の剣を見つめた。灰色の刀身には薄らと、悲しそうな自身の顔が写っていた。
「師匠・・・」
レットの隣を見ると、悲しそうにこちらを見るエメリアが立っている。
「ウオォォォォォォォ!!」
前からはパストが向かってきていた。
「・・・・・・わかったよ。今こそ勇気を出して踏み出す時なんだな」
カレッジは自身に言い聞かせるように、そう口にすると灰色の剣を振るった。
灰色の剣は空を斬った。
パストに届いていないはずの、その剣は鈍い光沢を放った。
すると突然パストの身体が、カマイタチにでも斬られたように身体が裂け、血が噴き出した。
「うあ?うあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
パストの巨大な身体は地面に倒れ込んだ。
そして血溜まりの中で動かなくなった。
「・・・・・・パスト。お前から受けたこの痛み、決して忘れない」
カレッジは自身の受けた傷を抑えた。
だがカレッジはパストからもっと深く、複雑な傷を受けていた。
そうそれはもっと深く、誰にも見ることのない傷を・・・




