戦友VS好敵手
夕刻時。カレッジたちは山奥の森の中にいた。
レミアにもらった地図をみながらこの山奥までやってきたのだ。
獣道を進んでいくと、古びた屋敷が見えてきた。つたが絡み苔が生え、窓が割れている。どこからどう見ても廃墟だ。
とても人が住んでいるようには見えない。
だが屋敷の前に黒い鎧を着た男が二人立っていた。 見張りがいるということはここが盗賊騎士団のアジトで間違いないようだ。
「なるほど・・・キーレお嬢様の屋敷を狙ったのはやっぱり、拠点にするつもりだったのね」
カレッジたちは草陰に隠れると、レゲンの土魔法で小石ほどの土の塊を投擲し、気絶させた。
入り口まで入ると二階に上る階段と一階の廊下が左右に別れていた。
「俺は右を探す。レゲンは二階、リケイルは左を探してくれ」
「わかりました」
「了解」
それぞれ屋敷の中を探索するため、別行動を開始した。
カレッジは途中の部屋を慎重に開けながら探索していると、大広間に出た。
そこには一人の男が立っていた。
よく知る男だった。
共にシール王国で闘い。
共に死戦を潜った戦友であり、競い合った好敵手。
アイスノックだ。
「よぉ久しぶりだな。カレッジ」
カレッジは一歩部屋に入ると二階の広間もあることに気づく。そしてその二階の広間に盗賊騎士団たちが集まっていたことも。
「安心しろこいつらはただのギャラリーだ。俺たちの決闘のな」
アイスノックは手を広げてアピールすると、カレッジは二階の大きな椅子に座り脚を組んでいる男に気づいた。
ところどころ歯が抜け落ち、小太りの男性。手には金色の指輪をはめていた。カレッジには見覚えがあった。
手配書で似顔絵をみたことがある。
盗賊騎士団の団長だ。
「おい、アイスノック。高い金払ってんだ。しっかり殺してオリジンシリーズを奪い取れよ」
「わかってますよ団長。これだけのギャラリーを用意してくれたんだ。素晴らしいステージをお見せしますよ」
アイスノックはそう話すと腰の剣を抜き、反対の手にメタモルフィアをもった。
メタモルフィアは氷が溶けるように溶け落ちると、水が形をなそうとするように固まっていく。カレッジのもつブレイドと似たような剣に変化した。
「へー手加減してくれるのか」
カレッジが笑いながら話すとアイスノックも笑みを見せる。
「相手より勝ること証明するには同じ武器で戦うしかないだろう。同じ武器を使い、勝利した時こそ完全に勝ったと誇れる」
「お前は昔からそうだ。目の前に見えるものしかみねぇ。だから今日負けるのさ」
カレッジはブレイドを抜刀するとアイスノックに切り掛かる。
アイスノックは笑みを崩さずカレッジを迎え撃った。
屋敷中に剣同士が打ち合う音が響き渡る。
二人の戦いが幕を開けた。