重い女
ミサハ王国東門では岩が空から降り注いでいた。
降らせているのは猫耳のような兜を被った水色の鎧を身に纏ったルーラの騎士だった。
立ち向かっていったミサハの騎士たちは空から降ってきた岩に潰されていた。
ある者は足を、ある者は腕を潰され動けず、ある者は頭を潰され二度と動くことはなかった。
その光景はまるで虫が人に挑んでいるようだった。
ルーラの騎士がミサハの城門を目指して歩みを進めると目の前に紫色の鎧を身につけた男が立っていた。
長い髪を後ろで纏め、両手には二本の剣を持っていた。
「これ以上進軍を許すわけにはいきませんね。ルーラの騎士!!」
目の前に立った紫色の鎧を着た男を見てルーラの騎士は首を傾げた。
「貴方は?ミサハの騎士?」
「私はミサハ王国騎士団長ロード・ナイフ。声からして女性のようですね・・・悪いことは言わないからお帰りなさい」
「なんで?」
「怪我をしたくないでしょう?」
ルーラの騎士はロードの言葉を聴いて腹を抱えて笑い出した。
「アッハハハハ、私が怪我?ありえない」
それを見てロードは怪訝そうな顔をすると剣を構えた。
「戦場での油断は死につながりますよ!!」
ロードはルーラの騎士目掛けて剣を投擲した。ルーラの騎士は剣を交わすが、ロードは素早く距離を詰めていた。
「とった!!」
ロードが剣を大きく振りかぶり、ルーラの騎士の首を目掛けて剣を振り下ろした。剣はルーラの騎士の首に命中した。
しかし剣が首を落とすことはなかった。なぜならロードの剣の刀身が粉々に砕け散ったからだ。
「な!?」
「わかった?これが怪我しない理由。私は岩魔法が使えるの。土魔法よりも強固で大地の地形だって好きに変えられる」
ルーラの騎士は自身の背中に背負った戦斧を抜いて構えた。戦斧の中心には赤い玉のような宝石がはめ込まれており、刀身や持ち手まで真っ黒だった。
「じゃあね、ミサハの騎士団長さん」
ルーラの騎士が戦斧を振りかざしロードの首を切り落とそうとするがロードは笑っていた。
ルーラの騎士の後ろに先ほど投擲した剣が迫っていたからだ。ルーラの騎士は気づいている様子はない。
「油断は大敵ですよ」
「そうね・・・・・・でもそれは相手によるわ」
ルーラの騎士の後ろに迫っていた剣が突然地面に落ち、不自然に地面にめり込んだ。
「な!?」
口を開けて驚くロードにルーラの騎士は淡々と告げる。
「この戦斧は重力のレプリカ。この武器の周囲の重力を操れるの」
「・・・・・・くっ!!ミサハに栄光あ・・・」
次の瞬間ロードの首は宙に待っていた。ルーラの騎士は戦斧を振い血を落とすと、戦斧を肩に担ぎ歩みを進める。
「やっぱり剣よりも斧よね。今の時代剣はダサいわぁ〜時代は斧よ」
城門の上では騎士団長の死を見て、意気消沈する者や逃げ出す者などが見られ混乱していた。
「あぁ〜ミサハ王国なんてこんなものか。これじゃあ簡単に落とせちゃうなぁ〜」
ルーラの騎士が城門の目の前まで来ると、突然城門の上から誰かが飛び降りてきた。
綺麗な黒い髪をたなびかせ、手には大人一人分よりも大きい黒い大槍を持つ女性だった。
「貴方がルーラの騎士ね」
「そういう貴方は誰?ミサハの騎士かしら?」
大槍を持った女性は誇らしげに大声で名を叫んだ。
「あたしの名はリケイル・ロックダイス。傭兵よ!!貴方の名前も聴こうかしらルーラの騎士」
「ルーラ王国騎士団長。ケルス・ミラルダ」
「ならばケルスよ。騎士として決闘を挑むわ」
「騎士?貴方は傭兵でしょ。ミサハの騎士じゃないでしょう」
「あたしは元シールの騎士団長よ」
「あぁ、なるほど前に会ったアイスノックやレゲンと同じ・・・・・・」
ケルスの言葉を聴いて突然リケイルの目の色が変わった。
「あぁん!!貴方レゲンくんとどういう関係よ!!」
強めの口調になったリケイルを見て、ケルスは戦斧を構えた。
「フフッ、何恋人?勝てたら教えてあげるわ」
「レゲンくんに近づく女はお姉ちゃんが全員ぶっ殺す!!」
「姉なのかよ!?ブラコンかよ!!!」
東門でランスと戦斧がぶつかり合い、重い重低音が響き渡った。
まるでその音は戦いの始まりを告げるような鐘の音のようだった。




