本当に撃ち抜きたいものは・・・
矢が飛び交うミサハ王国西門。シオン・レイダーツは建物陰に隠れながら自身に向かってくる矢を撃ち落としていた。
そして飛んできた矢をすべて撃ち落とすと自身の弓であるサンダーロアーに矢を込め放つ。
矢を射るスピードはとても早く、二秒で五本の矢を放っていた。
矢を放っている相手はルーラ王国の騎士であるグラム・インセント。まだシオンは彼の攻撃を一度も受けていなかった。
シオンは冷静に矢を放ち続ける。目の前の相手を見ている彼女だが頭の中では別のことを考えていた。
いやここ最近ずっと別のことを考えている。
頭の中から、エメリアとカレッジの顔が離れない。
この国に来ると余計に彼らの顔が頭に浮かぶ。戦闘中だというのにシオンは見据える敵よりも頭には彼らのことを考えていた。
「くっ、いけない!!今は敵に集中しなくちゃ」
シオンが自問自答しているとシオンの顔ギリギリを矢が通過した。
シオンの鼻先から血が垂れた。それをシオンは拭き取ると空を掴み青白い矢を手の中に生成した。
そしてそれをサンダーロアーの弦を引き矢を放つ準備をする。
「このままじゃ埒が明かない・・・サンダーロアーを解放するか」
シオンは決断すると大きな声で離れているグラムに届くように話し始めた。
「サンダーロアーの本当の使い方を教えよう!!サンダーロアーの本当の使い方は心の底から撃ち抜きたいものを言葉にすること!!」
シオンの声に反応し、センチは辺りを見渡した。
「女の声・・・・・・シールの騎士は女性なのか!?」
動揺しているセンチに狙いを定め、シオンは弦を引いた。
「私が心の底から撃ち抜きたいものは・・・カレッジの」
自身が撃ち抜きたいものを言葉にしようとした時だった。
バチィという音がシオンの指に響いた。シオンの握っていた弦から電撃が発生しのだ。
シオンの弦を握っていた右手が焦げ、白い煙を上げた。
「サンダーロアー・・・・・・どうして?」
シオンはサンダーロアーを見つめた。
自分の武器に拒絶されたのは初めての経験だった。シオンは動揺していたが、拒絶された理由はなんとなく心当たりがあった。
本当に撃ち抜きたいものは違うだろ。そう言われているような気がした。
撃ち抜きたい物はカレッジの心ではない、本当は自分でもわかっていた。
カレッジを想う気持ちよりも、モヤモヤした気持ちが段々と強くなっていることに、エメリアとカレッジの関係が羨ましいと思う自分の心に。
まるで自分の武器に心を見透かされているようだった。
シオンは深く呼吸すると再びサンダーロアーの弦を引いた。
ゆっくりと弦を引き目を閉じる。自分の認めたくない心と向き合うために、自分の本当の気持ちを口に出すために。
「私が本当に撃ち抜きたいものは・・・・・・」
弦を引く指に力が強くなり、サンダーロアーがバチバチと青白い光を放ち雷音が響き渡る。
サンダーロアーはシオンを拒絶していなかった。
それはシオンが本当に撃ち抜きたいものを示しているようだった。
「・・・エメリアとカレッジの関係」
心の底から撃ち抜きたいもの、壊したいものを口にした時サンダーロアーは光を放ち、青白い光の矢が飛んでいった。
サンダーロアーから放たれた青白い光の矢はグラム目掛けて飛んでいった。
雷速の速さで飛んでいった矢は建物を薙ぎ倒し、雷音を撒き散らした。
「な!?」
グラムはあまりの速さに反応できなかった。雷速の光の矢はグラムの左耳を削ぎ落とし、頬の肉を吹き飛ばした。
グラムはサンダーロアーの破壊力に呆然としていた。あと少しずれていれば自身が死んでいたことに、想像していた弓という武器を軽く超えていったオリジンシリーズという存在に。
グラムが自分の左耳がなくなった痛みと左頬が吹き飛ばれたことに気がついたのは数秒経ってからだった。
「い、いたい・・・・・・これがオリジンシリーズか。フフハハハッハハハ、いいなぁ!!とことんやり合おうシールの騎士よぉ!!」
グラムは顔の左半分を血に染め、失った頬のから歯を覗かせ笑みを見せた。
一方シオンは建物の物陰にうずくまっていた。
自身の気づきたくない醜い感情に気づいてしまった。嫉妬していたのだ。エメリアとカレッジの関係に。
それを思うと自分が惨めだった。
「・・・・・・いけない。戦いに戻らなきゃ」
シオンは目から流れ落ちる涙を手で拭いとり、再び弦を引く。
拭いても溢れ出てくる涙を流しながら、矢を放ち続けた。




