竜巻時々雷のち矢の雨
ミサハ王国西門。矢筒を背負い、弓を持ったルーラの騎士がゆっくりと歩みを進めていた。
手に持つ白い弓には金色のツタが絡み付いたような装飾が施されており、芸術品のようにも見える。
ユニコーンのような角のついた兜を被った騎士が歩く周りには大人一人と同じ高さの旋風が浮遊しており、ミサハの騎士が放つ矢は旋風に飲み込まれあたらなかった。
ルーラの騎士は城門の前までくると固く閉ざされた門に手をあてた。
すると騎士の手のひらから竜巻が発生し、門や城壁が吹き飛び、その上にいたミサハの騎士達を吹き飛ばした。
「化け物が!!!」
ミサハの騎士が弓を構え矢を放つが、矢はルーラの騎士の旋風に絡みとられあらぬ方向に飛んでいった。
「・・・・・・見るに耐えないな」
ルーラの騎士は背中の矢筒から矢を取り出すと、弓につがえた。そして矢を放った。
しかし矢はあらぬ方向に飛んでいった。
「な、何してるんだ外しやがった」
ミサハの騎士があらぬ方向に飛んでいった矢を見て笑っていると突如として喉元に衝撃が走った。
先ほどあらぬ方向に飛んでいったはずの矢が喉元を貫いたのだ。ミサハの騎士はパタリと倒れ動かなくなった。
「私の弓はレプリカ・・・追尾のレプリカ。獲物の生命力を追いかけ敵を撃ち殺す」
ルーラの騎士は手を広げしばらく静止すると、矢筒から再び矢を何本か弓に込めた。
そして矢を真上に発射すると、矢はまるで生き物のように軌道を変え建物の間や瓦礫の間に入っていった。
そして建物の間から断末魔が聞こえ、瓦礫の下から血が流れ出てきた。
「隠れてもわかるぞ。このグラム・インセントの持つ、嵐魔法は生命や魔力を感知できる。そして・・・」
グラムは手を大きく振るうと大竜巻が発生した。大竜巻は周りの建物を吹き飛ばし進行を始めた。
「見たかミサハの諸君!!これがルーラの力だ」
グラムは誇らしげに手を広げ、大声でその力を示した。
しかしその余裕もすぐに崩された。グラムの左肩に矢が突き刺さったのだ。
「何!?旋風を通り抜けて私を射抜いただと!!」
グラムは周りを見渡し、嵐魔法で周囲を探知したが射抜いた相手を見つけられなかった。
ヒュンという音が耳元に響いた。矢があたりグラムの兜を吹き飛ばした。
兜が地面に落ち、グラムの顔が明らかになる。グラムの顔には、横線のような傷が無数についていた。髪は白く二十代前半の男性といった印象だった。
しかも矢が飛んできた方向には先ほどグラムが生み出した大竜巻があった。
「ま、まさか私の竜巻を利用して矢を放ったというのか。竜巻が矢を吹き飛ばす角度を計算して!?」
再び矢がグラム目掛けて飛来し、グラムの耳を切り裂いた。
「くっ!!」
グラムは咄嗟に建物の物陰に身を隠した。安心したのも束の間。ドゴッという音と共に何かが建物を貫き飛んできた。
それは矢の形をしており、青白く発光していた。そしてその青白く発光したものはバチバチと音を立て形を崩し始めた。
「こ、これはシール王国の!!」
青白い矢は形を失い、激しい雷音を響かせた。辺りに電撃が広がった。
グラムは身体から煙を出しながらもなんとか立ち上がった。
「まさか・・・シール王国の弓兵と戦えるとは・・・・・・悪魔の誘いに乗ってよかったぞ」
グラムは手を振い、大竜巻を二つ発生させ建物の屋根へと登った。
そして矢を弓につがえた。グラムの顔は笑っていた。目に闘志を宿しながら。
「我が名はグラム・インセント!!シール王国最後の弓兵よ!!貴様に弓兵としての誇りを賭けて勝負を挑む!!」
再び矢がグラム目掛けて飛んできた。グラムはその矢を交わすと、お返しと言わんばかりに矢を放った。
「レプリカは使わん!!レプリカを使うことは我がプライドが許さんからな。我が腕前で貴様を討ち倒す!!」
すぐに矢はグラム目掛けて飛んできた。その中には先ほど飛んできた青白い矢も混ざっていた。
「く、なんて奴だ。普通の矢に混ぜて撃ってくるとは!!しかも正確に私を射抜こうとしている」
青白い矢は交わしても電撃を放ち、普通の矢も飛んでくるため、回避を間違えれば致命傷を負いかねない。
「フフハハハッハハハ、面白いなぁ!!これだから戦いはやめられない!!貴様もそう思うだろう?シールの騎士よ!!」
グラムはまるで会話でもするかのように矢を放ち続けた。
姿が見えない敵を狙って放たれる矢は線を描き飛んでいく。
ミサハの西側では風が打ちつける音と雷音が響き渡り、矢が雨のように降り注いだ。




