悪魔に誇りを売ってでも
ミサハ王国近辺は野原が広がっていた。南側に位置する何もない草原に突如として三日月型の亀裂が入った。
そしてその中から二人の鎧を着た男が出てきた。
「貴方で最後ですね、ガロンさんの持ち場はここです。ではよろしくお願いしますね」
金色の鎧を着た金髪の男がガロンを置いて空間に空いた亀裂に入ろうとすると。
「・・・・・・おい待て」
「はい?」
次の瞬間だった、金髪の男の顔面に強烈な右ストレートがクリーンヒットした。
金髪の男は草原に殴り飛ばされ、自身の頬を押さえた。そして自分が殴られたことを理解した。
「なんのつもりでしょうか?」
金髪の男は殴られたことを理解しても特に怒るそぶりはなく、笑みを作るとガロンに質問した。
「なんのつもりだと・・・・・・ルイ、テメェ!!言いたいことはわかるだろう?なんでトルーメ王子が殺されたことを黙ってた!!」
ガロンは怒りの拳をつくってルイに見せた。恐らく兜の下は怒りの表情に染まっていることだろう。
「俺が王子と親友だと言うことは知ってるだろ!!お前は姫のためなら国がどうなっていいのか!!」
ガロンはルイの胸ぐらを掴み持ち上げた。しかしルイは表情を崩さなかった。
「えぇ・・・・・・姫のためなら私はなんでもしますよ。悪魔にだって魂を売ります」
その言葉を聞いて呆れたのかガロンはルイから手を離した。
「いかれてやがる、お前の気持ちはわからん。あの姫の何がお前を突き動かすんだ。忠誠か?それとも惚れたのか」
「お前に姫の何がわかる!!!!」
突然聴こえた怒鳴るような声にガロンはルイを見た。先ほどまでの笑みは崩れ、怒りに染まった顔をしていた。
「外に出たくても出れず、病に侵されいつ死ぬかもわからないと怯える恐怖が!!それを見せまいと気丈に振る舞う姫の気持ちが!!」
ガロンはルイの話を黙って聞いていた。ルイが感情的になるのを初めて見たのもあったが、ここまでルイが忠義に厚いとは思っていなかったからだった。
「姫の病はルーラの名医でも治せなかった。だから私は決めた。悪魔に魂を売ってでも姫を治してもらおうと・・・どんな手を使っても・・・・・・」
「・・・・・・なるほどな。お前の覚悟はわかった。先ほどの発言は訂正させてもらおう」
「わかればいいのです・・・・・・では頼みましたよガロン騎士団長」
ルイが裂けた空間に入ろうとした時だった。
「・・・・・・ううっ、ぐはっ」
突然ルイが口から血を噴き出した。
「お、おい大丈夫か!?」
ガロンが駆け寄ると、ルイは口を手で抑え自分の足で立ち上がった。
「えぇ・・・・・・大丈夫です」
「お前・・・まさかレプリカの代償が」
「はい・・・恐らく私に残された時間は少ないでしょう・・・・・・それまでに姫を救わねば」
「なぁ・・・もうやめたらどうだ。きっと姫もこんなこと望んでない。それにお前がいなくなったら姫は悲しむぞ」
ルイはふらふらした足取りで次元の裂け目に進んでいった。
「わかっています・・・・・・ですが姫がいない世界に私が耐えられないのです。それに姫の痛みに比べたら私の痛みなど軽いものです」
そう言いながらルイは空間の裂け目の中に消えていった。ルイが入ると次元の裂け目は閉じてなくなった。
ガロンは一人草原に残された。風が激しく吹き始めた。その風を身体いっぱいに浴びると腰に下げたレイピアを抜いた。
「・・・・・・あんな覚悟を聞いたら、やるしかなくなっちまうな。まぁこれも定めってやつかな」
ガロンは草原を歩き、ミサハの城壁の前まで来ると城壁にいるミサハの兵士に聴こえるように声を張り上げた。
「我はルーラの騎士団長が一人ガロン・バレル!!!貴様らの主の首を貰い受けに来た!!戦う勇気のあるものだけ我が前に出てこい!!騎士の誉にかけて討ち倒してくれる!!」




