我が生涯の好敵手
クレイの放った剣の一撃をレットは受け止めた。しかしクレイは剣に力を込め、レットの剣を押し切ろうとするがレットは表情を変えることなく剣を受け止める。
クレイは剣を再び振い斬りつけるが、レットはその剣を受け流し弾き返した。
それを見ていたフロスは焦っていた。
「父上!!クレイ騎士団長を止めなくていいんですか?このままじゃあ、あの人も危険ですよ!!」
フロスの言葉を聞いてもアルファスは焦ることなくただ腕を組んでレットとクレイの戦いを眺めていた。
「父上!?」
「フロス・・・心配しなくても決着はもうついている」
「・・・・・・え?」
「最初の一太刀目で・・・すでに・・・」
そう話すとアルファスはレットとクレイの戦いを静観し続けた。
横にいたレゲンも同じだった。ただ黙って二人の斬り合いを眺めている。
フロスもアルファスの視線を追い、斬り合う二人を見てみるとクレイが息を切らしていた。
剣を振るう腕も勢いを落とし、速度が落ちていた。顔からは大量に汗を流し、腕には血管が浮かび上がるほど力を込めているが剣に加わる力は明らかに弱くなっていた。
それをわかっていながらレットは剣を受け流し続ける。
そして数秒して、クレイの手から剣が離れ地面にカランという音を立てて落ちた。
息を切らすクレイをレットはただ黙って見つめる。その目は哀れむような目ではなく、強敵を見るような力強い目つきだった。
「ハァハァなぜだ・・・・・・なぜ私を殺さない」
心の奥底に溜まった思いを吐き出すかのようにクレイは言葉を吐いた。
「悔しいが私はお前には敵わない・・・どれだけ剣の腕を磨いても、努力しても・・・貴様には勝てない」
レットはクレイの言葉を静かに聞聞きながら、剣を腰の鞘に納めた。
「私は老いてもお前は老いを知らない・・・・・・生きていても惨めだ。せめて死ぬならお前に殺してほしい・・・・・・頼む!!」
クレイは首を差し出すかのようにその場に崩れ落ちた。
「なぜ私を殺さない・・・もう生きていても辛いだけだ。もう嫌なんだよ現実を見ながら生きるのは!!」
「クレイ・・・・・・」
レットはクレイの側にゆっくりと近づくと、腰を落とした。
「クレイよ・・・ワシはお前との戦いが楽しかった。お前は戦場でもっとも強かった、だからお主を止められるのはワシしかシールにはいなかった。しかしお前との戦いはワシの心を踊らせたのだ。お前を苦しめていたとは知らなかった・・・・・・」
クレイが頭を上げるとレットはクレイに頭を下げていた。
「ワシは三百年生きているが、お前ほど自分を磨き上げる騎士は見たことがない。お前に敬意を払ったつもりだったが・・・すまなかった」
レットの言葉を聞いてクレイの目に光が戻ったようだった。
「フフッ、アハハハハ私の人生は無駄でなかった。もっと早くこうして言葉を交えたかったな」
大声で笑い出したクレイにレットは手を差し伸べた。
「今からでも間に合うさ、クレイ・キルマンド」
「あぁ・・・ゆっくりと話をしようレット・ルダーク」
二人は固く握手を交わした。戦場での敵としてではなく同じ戦場で戦い続けた戦友として。
それを見るとアルファスは手を叩き周りの騎士に呼びかけた。
「お前たちクレイ騎士団長は長旅でお疲れだ。休ませて差し上げろ」
アルファスの言葉を聞いて周りの騎士達は慌ててクレイの周りに集まり、城の中に案内していった。
レットはクレイの後ろ姿を静かに見送った。
「さてレゲンさん、レットさん大変申し訳ありませんがそろそろ持ち場についていただきたい。この件の謝罪は後ほど行いますが、そろそろルーラの姫君が到着してしまう」
「えぇわかりました。いきましょう、レットさん」
「あぁ・・・・・・後でゆっくり話そう。我が人生のライバルフロスよ・・・」
レットは一言呟くとレゲンの後に続き城壁に向かうのであった。




