鎖を断ち切る者
フルバイエのある牢獄中、パストは再び鎖に繋がれていた。
カレッジに斬られた傷口は止血され、塞がっているが血がうっすらと上がってきていた。
牢屋は小さな灯りが照らすだけで、後は天井から垂れる水滴の音が響くだけだった。
「また牢の中か・・・・・・」
パストが諦めたように呟くと、コツコツと足音が聞こえてきた。
「何だよ、別に脱走するつもりはねぇぞ番兵さんよぉ。ちょつと一人言を言っただけだ」
「私は番兵ではありませんよ。パストさん」
パストは聞き覚えのある声に牢の外を見た。そこには金髪の髪に細い目をした男が立っており、手には血のついた長剣を持っていた。
「・・・ルイ!!」
「再び牢屋に繋がれるとは逃した意味がないではありませんか」
「何の用だ!!俺を殺しにきたか?」
「・・・・・・いいえ。用があるのは私ではありません」
ルイはそう話すと誰かに向けて頭を下げ、一歩後ろへと下がった。
ルイが頭を下げた方向を見ると、誰か歩いてきた。そしてパストのいる牢の前で止まった。
その姿は十代ほどの見た目とヒラヒラとしたスカートを着たドレスのような服装をしていた。絹のように白い髪とルビーのような赤い目をした少女だった。
だが彼女の美しい容姿とは反対に目はまるでゴミでも見るかのように鋭く、獣にでもあったかのような威圧感をはなっていた。
まるで何者かが少女の身体に入り込み乗っ取っているかのような。
「何だ・・・・・・お前は?」
パストの問いに少女は鼻で笑ってせると腕を組んでパストを見下ろす。
「何者かなどどうでもよい。貴様は役目をまだ果たしておらん」
少女は手を開くと手の平から宝石のような灰色の石が出てきた。そしてそれをパストの口の中へと投げ入れた。
「んぐっ!!」
パストは突然のことに反応できず灰色の宝石を飲み込んでしまった。
「ぐっわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突然パストが苦しみ出すと、パストの身体が内側から何かが突き破るように変化し始めた。
「喜べ・・・貴様が五人目だ。我の糧となるためにせいぜい暴れろよ」
「テメェ何を・・・した」
パストが鉄格子を掴むと手から鳥の羽のような物が生え、鉄格子がぐにゃり曲がった。
それを見てルイは長剣をパストに向けて振るった。すると空間に三日月状に裂けその中にパストは飲み込まれていった。
「何じゃ面白いところじゃったのだが」
「姫様に何かあってはいけませんから」
ルイが頭を下げると少女はまるで心を見透かしたかのように邪悪な笑みを浮かべた。
「フッフフフ、違うじゃろ。妾に何かあっては困るのではなく。この身体の持ち主に何かあってはうぬが困るのじゃろ?」
少女の問いにルイはただ黙って頭を下げ続けた。
「安心せい。この女の病は治してやる、そういう契約だからのぉ。うぬら騎士の間では誓いとでもいうのかのぉ」
少女は自分の顔を愛おしそうに撫でると、ルイの肩に手を置いた。
「さぁ・・・・・・用はすんだ。戻るとするかのぉ」
「・・・・・・御意」
ルイは長剣で空を斬ると空間が三日月状に割れた。そして少女とルイはその中に入ると裂けた空間は何事もなかったかのように元に戻った。
牢獄には不気味なほどの静けさが戻るのであった。




