一時の遊戯
カレッジとパストが戦っている最中、エメリアは市場を彷徨っていた。
「師匠!!アルファスさん!!どこに行ったんですかぁぁ!!」
エメリアの声は市場で賑わう人の声で消し去られ、誰にも届いていなかった。
「うぅ・・・逸れてしまった。風魔法で探そうにも人が多すぎるよぉ〜」
エメリアはトボトボと歩きながら周りの人の顔を見てはカレッジではないことを確認し、しょんぼりしていた。
そしてため息を吐きながら歩き疲れベンチに腰掛けた。
「もぉ〜どこにいったの〜」
そんな愚痴を吐き出していた時だった。
「もし?お聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
鈴の音がなるような小さくも美しい声が目の前から聞こえてきた。顔を上げると、絹のように美しく整った白い長髪をした少女が立っていた。ドレスのようにヒラヒラしたスカートを履き、ルビーのような美しい瞳でエメリアを見つめていた。
「なんですか?」
「このお店に行きたいのですがご存知でしょうか?」
少女は地図を見せて、エメリアに聞くとエメリアは店の方向を指差した。
「向こうを真っ直ぐ行って右に曲がれば着きますよ」
「ありがとうございます。ではこれはお礼ですわ。ご機嫌よう」
少女はエメリアに金貨を2枚渡すとエメリアが指差した方向とは逆の方向に歩き出した。
「ちょ、ちょっと!!なんで逆に行くんですか!!しかもこの金貨は何!!」
エメリアが少女の肩を掴むと少女はキョトンとした顔をしていた。
「何ってチップですわ。お礼にはチップを差し上げるのがお約束ですわ」
「チップって。普通はお礼にチップなんて払わないし、言葉だけでいいんだよ」
「そうだったんですか!!勉強になりましたわ」
少女は純真無垢な濁りない目でエメリアを見つめた。エメリアもわざとではなく本気でやっていることを理解するとため息を吐きた。
「・・・・・・まぁ、お店に着いてもそうゆうことはやらないでね」
「はい、わかりましたわ。ではご機嫌よう」
少女はスカートの裾を軽くあげお辞儀すると、エメリアが教えた道とは反対側の道を直進しようとした。
「だからこっちだって逆だよ。道!!」
エメリアは肩を掴み、少女を引き留めると少女はしょんぼりとした顔をしていた。
「すいません。私外に出るのは久方ぶりなもので、外のことはよくわからないのです。この町も初めてなので・・・・・・」
しょんぼりする少女を見て、エメリアは少女の手を握った。
「じゃあ私がこの町を案内してあげる」
「いいんですか?」
「私も逸れて暇だったし、いいよ」
「ありがとうございます!!」
「ところで貴方名前は?」
「タンティアと申します。お家の名前は訳あって話せません」
「ふーん。私はエメリア・テンペストよろしくね。じゃあ行こうか」
「はい!!」
二人は手を繋ぎながらアルカナルの町を歩き、タンティアの行きたかった店に着いた。そこはケーキの店だった。
「行きたかった店ってここ?」
「えぇ、ここですわ。私ここのスイーツを食べてみたかったのですの」
「そうだったんだ」
「さぁ入りましょう。エメリア様」
エメリアとタンティアは店に入るとケーキを楽しんだ。金額はエメリアが普段生活しているだけじゃあ払えないような値段だったが、タンティアが喜んで食べていたためエメリアもそれを見て楽しんでいた。
「次はあちらもみたいですわ!!」
店を出てタンティアが指を差したのはアクセサリーが売っている露店だった。
「いいよ。エメリアさんが付き合ってあげる」
「嬉しいですわ」
エメリアとタンティアは時間を忘れたように二人店を巡っていた。まるで無邪気な子供のように二人とも楽しんでいた。
そしてしばらくしてエメリアはカレッジ達のことを思い出した。
「あ!!ごめん、タンティア。私用事を思い出した。ここでお別れさせて」
エメリアはタンティアに謝罪するように手を合わせると、タンティアを置いて走り出そうとするとタンティアに手を掴まれ引き止められた。
「一人にしないでくださいまし、私寂しいですわ」
目をうるうるさせてエメリアを見つめるタンティアにエメリアは肩にそっと手を乗せた。
「大丈夫。ちょつと用事を済ませたら片付けてまた来るから」
「嫌です。私もお付きの方と離れて不安なのです。一人にしないでくださいまし」
「大丈夫だよ、タンティア。騎士は誓いを守るんだよ。私は約束は守らないから」
「エメリア様・・・・・・」
二人が話していると遠くから「タンティア様〜」と声をあげて近づいてくる人影が見えた。
タンティアはその方向を見るとエメリアは手を振り払い走り出した。
「あぁ、エメリア様!!」
「じゃあね、タンティア!!今度会った時は様付けじゃなくて呼び捨てで呼んでね」
「わかりましたわエメリア。また遊びましょう」
「うん、約束ね!!」
人混みに溶け込むように消えるエメリアを見送るとタンティアはどこか寂しそうな顔をしていた。
「タンティア様、ご無事でしたか。勝手に離れられてしまっては困ります」
駆け寄って来た男は青い鎧を身に纏い、刃が剥き出しになった長剣を腰に挿していた。金髪の髪に、狐のような糸目をした青年だった。
「ごめんなさい、ルイ・・・・・・つい楽しくなっちゃって」
「ご無事でよかったです。ですがここは敵国なのですよ。貴方に何かあっては国に関わります」
「・・・・・・すいません」
「さぁ馬車を待たせています、戻りましょう。タンティア・ルーラ姫。ミサハ王との会見に遅れてしまいます」
「・・・・・・わかりましたわ」
タンティアは先ほどまで浮かべていた楽しげな表情とは逆に寂しそうな顔をして、ルイに着いて行った。
そして馬車に乗り込むと馬車は急いでその場を立ち去るのであった。




