野に放たれた過去の異物
我獣となりて自由を手にする者なり
石壁でできた薄暗い地下牢。蝋燭に灯る光が鉄格子の中にいる収監者をわずかに照らしていた。
雨水がポツンポツンと自分の体に落ち、男は目を覚ました。
男の髪はボサボサに伸びており、両腕は壁から伸びる鎖に繋がれていた。顔には獣に引っ掻かれたような三本線の傷が斜めに刻まれていた。
男は目が覚めた後、特にすることもなくなんの変哲もない牢獄の床を眺めていると、コツコツと何者かがこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。
足音が目の前で止んだことに確認すると男はゆっくりと顔を上げた。
「ご機嫌いかがですか?パストさん」
話しかけてきた男は狐のような怪しい笑みを浮かべていた。腰には鞘もついていない刃が剥き出しの剣をそのまま腰に挿し、金髪の髪が蝋燭の光で煌めいていた。
「なんのようだルイ?お前ら・・・・・・ルーラ王国に捕まってから十年。ついに処刑でも決まったか?」
「フフッ、まぁ貴方が衰弱するのを待つつもりでしたがなかなかしぶといですね。貴方も」
「自分の血を垂らして誘き出したネズミや虫を食べて食い繋いだんだ。お前らの首を掻っ切るまで死なないぜ俺は」
「そうですか。なら結構・・・・・・予定が変わりました。貴方をここから出しに来たのです」
「あ!?」
パストは疑問声を上げるとルイは腰から抜いた剣を振るった。するとパストの自由を奪っていた鎖が切断された。
「今どうやって斬った?」
「私の空間のレプリカは物体を無視できるのです。そしてこういう使い方もできます」
ルイは剣を振るうとパストの隣に三日月型の空間の歪みが出現した。
「その中に入れば外に出られるでしょう」
「どういうつもりだ?」
パストは鉄格子を掴み、まるで威嚇するようにルイに近づくがルイはその笑みを崩さなかった。
「どうも何も、貴方を拘束する理由がなくなった。ただそれだけです」
「何?」
「シール王国はもうなくなりました。貴方を拘束する意味もありません」
「なんだと!!!!」
「嘘だと思うなら貴方の目で確かめて見てはどうですか?その歪みを通って外に出てね」
パストは牢獄の中に出現した三日月型の空間の歪みを見ると、再びルイを睨みつけた。
「・・・・・・いいだろう。その口車に乗ってやる・・・・・・だが後悔することになるだろう。このパスト・ラルユウスが貴様の喉笛を噛みちぎるからだ」
「ええ・・・・・・楽しみにしていますよ。守る国もない放浪者よ」
パストは三日月型の空間に飛び込むと空間の歪みは何もなかったかのように元に戻った。
ルイは来た道を戻るように歩きした。部屋から出る階段の前に男が壁に寄りかかるように待っていた。
「どうしたんですか。ガロンさん」
男は名前を呼ばれると壁から背を離した。水色の鎧を身に纏った無精髭を生やした男。腰にはレイピアを挿した男は不機嫌そうな顔でルイを見ていた。
「・・・・・・げせねぇなと思ってな」
「何がです?」
「あの男を解放したことだ。そろそろミサハとの会談も近いっていうのになんで解放した」
「彼には囮になってもらうためですよ」
「囮?」
ガロンが首を傾げるとルイは怪しい笑みを浮かべるのであった。
「かつての仲間であるシール王国の騎士達の気を引いてもらうための囮としてね」




