誓いを胸に時は流れる
レット達が悪魔と戦い勝利してから、数十年が経った。
ある晩、大きな屋敷の中ではパーティーが催されていた。鎧を着た兵士達が酒を飲み、食事を食べ盛り上がっている中、パーティーの主催者が大広間につながる階段の上からジャッキを片手に持ち、語りかけていた。
「みな今回の戦いご苦労だった!!今宵は勝利の宴だ。大いに飲み、騒いでくれ!!」
そう言った男は白い鎧に身を包み、銀髪の髪をした青年のような面立ちだった。左指にはピンクの宝石を加えたドラゴンのような指輪をしていた。
「レット騎士団長にかんぱーい!!」
「我々の勝利にバンザーイ!!」
レットに向けてジャッキを向けてから酒を飲み騒ぐ自分の部下達を見て、レットも嬉しそうに酒を飲んだ。
するとガンっという音が響き、屋敷の扉が勢いよく開いた。
皆の目線が扉の方に向くと、そこには白く長い髭を蓄え、赤いマントをした老齢の男が息を切らして立っていた。何か焦ったような男はレットに早足で近づいてきた。
「おい!!レット貴様、呑気にパーティーなんてやってる場合か!!今がどんな時かわかってるのか!?」
「まぁまぁ落ち着けってルミナス王・・・・・・外で話そう。みんなは飲んでいてくれ、俺は王様と話してくるから」
レットは酒を飲む自身の部下達を屋敷に残して、ルミナス王と共に外に出た。
「なんだよ。ルミナス今祝勝会兼送別会の最中だって言うのによ」
「カラバスが戦場で死んだんだぞ!!見送りにも来ないとはどういうことだ!!」
ルミナスの言葉を聞いて、ヘラヘラしていたレットの笑みが消えた。
「・・・・・・わかってるよ。だからこうやって騒いでるだろ。カラバスが寂しくないようにな」
「レット・・・・・・お前」
「もう悪魔との戦いを知るのも俺たちしかいなくなっちまったな。エンベルトは戦いが終わって旅に出たし、カラバスも死んだしな」
「デュランから連絡はないのか?」
「・・・・・・ないよ。ニュイが死んだって聞いてから抜け殻みたいだったし、吹っ切れてから旅に出るって言ったっきり会ってもないし、連絡もない」
「・・・・・・そうか」
二人の沈黙を埋めるように夜風が吹いた。木の葉を揺らし、冷たい風が肌を刺す。黒いキャンパスに描かれたような月や星の光が二人を照らしていた。
「なぁルミナス・・・・・・お前には夢はあるか?」
「なんだ突然?」
「俺はニュイを失ってから、心に穴が空いたような感覚がするんだ。まるで何が欠けてしまったような、夢から覚めてしまったような・・・・・・」
悲しそうに話すレットを見ながら、ルミナスはただ黙ってレットの言葉を聞いていた。時が経ち歳を取ったのはルミナスのみで、レットの外見は変わっていなかった。まるで時が止まったように。
「それから目標が持てないんだ。夢を見れなくなっちまったようにな」
「・・・・・・なるほどな。お前の中でニュイさんの存在は大きな物になっていたんだな」
顔を下に向け、光が届かず闇に覆われた地面を見るレットにルミナスは空に浮かんだ月を見ながら口を開いた。
「なぁレット・・・・・・お前は後何年生きる?」
「・・・・・・さぁな。ニュイの闇魔法で蘇ったからなわからん。魔法が切れて死ぬのが明日かもしれないし、一年後か十年後か、もしかしたら数百年先かもしれん」
「なら私がお前に目標をやる。私の分までこの先の世界を見届けること」
ルミナスの顔を見ると、ルミナスは優しく笑っていた。まるで何かを悟ったかのように。
「・・・・・・ルミナス。お前・・・・・・まさか」
「あぁ、病気でなそんなに長くない・・・・・・まだお前にしか言ってないがな」
レットは下に顔を向け目元に手を当てると、ルミナスを真っ直ぐと見つめた。
「わかった・・・・・・その誓い必ず果たそう」
「あぁ頼む」
ルミナスとレットは固く握手を交わした。ルミナスの手から伝わる体温は氷のように冷たく、しわしわになった手は骨と皮しか残っていないように感じた。
「あと、もしこの国が民を虐げることがあれば、その時はお前がこの国を終わらせてくれ」
「何を言ってるんだ!?せっかく作った国なんだぞ。近隣ではミサハやルーラだって戦力を広げているっていうのにみすみすくれてやるのか!!」
「民のいない国など国ではない・・・・・・もしそうなればお前の手でこの国を終わりにしてくれ親友」
「・・・・・・わかった。我が友ルミナス・シール王よ」
「私の最後の任務を託すぞ。崇高なる騎士・・・・・・レット・ルダーク」
その後、数日してルミナス王は亡くなった。苦しむことなく、安らかに眠るように旅立ったそうだ。
それから数百年の年月が過ぎ、三百年続くシール王国も内乱により滅びた。
そして王国が滅びてから四年の年月が流れるのであっま。




