大気の支配者
不気味な風が吹いていた。背筋につららを突き立てられたような、寒気と汗が三人に流れた。
目の前で立つ悪魔マルガンテは、パキパキと右手を鳴らしていた。
「デュランさん、エンベルトさん・・・・・・僕が囮になります。その間に仕留めてください」
「いけるのか?ルミナス」
(お前の身体能力では奴にはついていけないだろう)
「大丈夫です。策があります」
ルミナスはメタモルフィアを菱形の結晶に戻すと手の中で握り潰した。
「メタモルフィアの本当の使い方を教えてあげましょう。メタモルフィアに形を与えることです」
「・・・・・・ほう。また新しい武器か」
ルミナスの手の中で握り潰されたメタモルフィアから朱色の液体がルミナスの身体を包み込んだ。朱色の液体はルミナスの身体にまとわりつくように固まった。
メタモルフィアは鎧のようにルミナスの身体を覆った。
「鎧を纏ったぐらいで私の攻撃を防げると思っているのか」
マルガンテの姿が消えると、ルミナスの眼前に立っていた。そしてそのままルミナスの左肩に手を置いた。
「終わりだ」
「なぁ!?うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
ルミナスの肩が膨張し始め、朱色の鎧が膨らんでいく。そして、風船が割れる直前のように膨張し、弾け飛ぶかと思われた。
「・・・・・・なんちゃって」
ルミナスの言葉と共に膨張していたルミナスの肩は形を変え、無数の針となりマルガンテを貫いた。
マルガンテの顔や胴体にメタモルフィアで作られた針が突き刺さった。
「なるほどな・・・・・・お前らのその武器に私の力は効かないようだ」
顔を貫かれたまま、マルガンテは喋り始めた。針が刺さった場所から血が滴り落ちているが、そんなことは意に返していないようだった。
「今です。デュランさん」
(よくやった。ルミナス!!)
デュランはブルートランスを構え、マルガンテの後ろから迫ってきていた。
ブルートランスがマルガンテを貫く直前、マルガンテの足元の地面が突如として膨張し始めた。
(なに!?)
膨張した地面にバランスを崩され、デュランは身動きが取れなかった。そしてそのまま膨張した地面が弾け飛ぶと辺りに石の破片が辺りに勢いよく散らばった。
(くっ!!)
「うわっ!!」
ルミナスも地面が弾け飛んだ勢いに飛ばされて吹き飛ばされてしまった。
マルガンテは地面にゆっくりと着地した。先ほどまで空いていた穴から血液がこぼれると、血液が穴が塞ぎ傷を治癒させた。
「やれやれ、全身を覆われると面倒だな。仕方ない」
マルガンテはルミナスに向かって何かを飛ばすように空を弾くように叩いた。
「なんだ?」
ルミナスは不思議そうにマルガンテが空を叩くのを見るがとくに何かが起こるわけでもなかった。
だがそれはマルガンテが空を叩いた数秒後に襲ってきた。
「うっ!?」
突然ルミナスの腹にハンマーで殴られたような衝撃が襲ってきたのだ。
「ぐ、ぐぼぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ルミナスはあまりの衝撃に胃が圧迫され胃液を吐き出した。
(いったい何をした!?)
「空気を飛ばしたのだ。お前らは私の力が破裂される力だと思っているようだが違う・・・・・・私の能力は空気だ。空気を操るのさ」
(クソ!!)
デュランはブルートランスでマルガンテに連続突きを放つが、マルガンテはそれを意図も容易く避けて見せた。
「どうした?こんなものか。女騎士」
(貴様に勝たなくてはならないのだ。ニュイ様のためにも)
「またあの魔女か、所詮は魔女の犬だな。興も冷めた死ね女騎士」
マルガンテの手がデュランに伸び、デュランの身体に触れる直前。
突然マルガンテの身体に雷に打たれたような衝撃が襲った。
デュランはその一瞬の隙を見逃さず、マルガンテから距離をとった。
「よう元気か。悪魔野郎」
声のした方向を見ると、そこにはサンダーロアーを構えたカラバスが立っていた。
「カラバスさん!!」
「カラバス!!無事じゃったか」
エンベルトやルミナスがカラバスに駆け寄ると、カラバスは少し笑みを見せた。
「サエンはどうしたんじゃ?」
エンベルトの言葉にカラバスはしばらく沈黙した。
「後で・・・・・・後で追ってくるさ」
エンベルトはカラバスの言葉に何かを察したのか悲しい表情をみせた。
「・・・・・・そうか」
「あの時の弓使いか。お前じゃ私を仕留められないだろう」
「それはどうだろな。ここには俺以外にも相手はいるぜ」
「フッ、所詮人間なんぞ。アリ同然・・・・・・まとめて吹き飛ばしてやる」
マルガンテはそう言うと背中から、蝙蝠のような翼を生やすと空中に浮かび上がった。
そして右手で何かを握り潰すように手にエネルギーを集中させていた。
「空気を圧迫して、貴様らごとここらを吹きばしてやる。左手があれば完璧だったが右手だけで十分だ」
周りの酸素が薄くなるような感覚を四人を襲う中、空中にいる敵にカラバスは矢を放つが、矢がつき刺さってもマルガンテは全く意に返さない。
「クソ万事急須か」
「いえ、カラバスさん。そのまま矢を打ち続けてください」
「どうするつもりだ?ルミナス」
マルガンテの手の中で空気が圧縮され、手のひらから圧縮された空気が今にも弾け飛びそうな中、カラバスは矢を放ち続けた。
「フッ、無駄な抵抗だ。このまま吹き飛べ!!人間ども!!!」
手のひらに圧縮された空気を叩けつけようとマルガンテが振りかぶったその時。
ドスという音が、マルガンテの腹に響き渡った。カラバスが放っていた青白い矢が腹に刺さったのだ。
「この程度、痛くもないわ」
しかし、マルガンテの身体に異変が起きていた。先ほどまで空気を圧迫しようとしていた右手がミイラのように干からびていたのだった。
「な、なに!?」
「残念でしたね。貴方の腹に刺さったのはカラバスさんの矢ではありませんよ」
「なんだと!?」
マルガンテは自身の腹をよく見てみると、先ほどまで刺さっていた青白い矢が霧が晴れるように真の姿を表した。それはデュランが持っていたブルートランスだった。
「僕の水魔法で幻覚を見せたんですよ。ブルートランスが当たるのを気づかせないためにね」
「くっ、クソォォォォォォォォォ。下等な人間どもがぁぁぁぁぁぁぁ!!」
マルガンテの身体はドンドン血がブルートランスに血を吸われ、断末魔を上げながらカラカラのミイラになると灰となり風に散っていた。
「貴方の敗因は人間への油断と慢心でしたね」
「終わったのう」
「いやまだだ。ララキューレがいる」
(・・・・・・まかせよう。ニュイ様とレットに、私は主人の勝利を信じて待つ気になったよ)
「そうですね・・・・・・たのんだぞレット」




