舞い散る結晶
カラバスとサエンが魔物達と戦い始めてから数十分が経った。二人は息を切らしながらも、空中にいる魔物を撃ち落とし、襲ってくる魔物を切り伏せ、地面は魔物の骸と赤い血で満たされていた。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・まだ魔物達はくるか?」
サエンは遠く見ると魔物達は数を減らすことなく、虫のように大量に迫ってきていた。
「ダメですね。まだまだ数が減りそうにない」
「そうか・・・・・・なら」
カラバスはサンダーロアーにゆっくりと矢をつがえた。
「魔物共・・・・・・お前らにサンダーロアーの本当の使い方を教えてやる。ここの底から撃ち抜きたい物を口にすること!!」
サンダーロアーから青白い稲妻のようなものが激しくスパークしだした。そして、カラバスは矢を放つと同時に撃ち抜きたい物を口に出した。
「てめぇら・・・・・・平和を乱すものの命!!サンダーロアー解放!!」
サンダーロアーから放たれた矢は音速を超える速度で放たれた。音を置き去りにしたその矢は、魔物の群れに向かって飛んでいく。
そして魔物達に矢が着弾すると、魔物の群れは激しい光に包まれ、周りに雷鳴が響き渡った。
サンダーロアーが着弾した大地は焼け焦げ、黒く焦げた魔物だったものが転がっていた。
しかし、その魔物の骸を踏み潰すように闇の中から魔物達が続々と出現し、カラバス達を目指して向かってきた。
「これじゃキリがないな・・・・・・」
「やっぱり悪魔を倒すしかないですね」
二人が話していると、二人の背中を突如として何が切り裂いた。
「くっ!!」
「いてぇ!!」
二人が振り返ると、グリフォンが後ろに立っていた。ライオンのような前脚には二人の血が付いていた。
「こいつ!!」
サエンは目にも止まらない速さで剣を振り、グリフォンの首をはねた。
「大丈夫かサエン!!」
「はい・・・なんとか」
二人が話しているのも束の間、横から女性が歌うような声が聞こえてくると、衝撃波が襲ってきた。
「ラアァァァァァァ」
「うわぁぁぁぁ!!」
「くっ!!人魚か!!こなくそ!!」
カラバスは衝撃波を受けながらもサンダーロアーに矢をつがえ、人魚に向かって放った。
放たれた矢は人魚の頭を撃ち抜き、人魚はバタリとその場に倒れた。
「クソ!!右の鼓膜をやられた。サエン大丈夫か?」
カラバスはサエンに駆け寄ると、サエンは胸を抑え口から大量の血をこぼしていた。
「サ、サエン・・・・・・お前」
「・・・・・・どうやら肺といくつかの臓器をやられたようです」
サエンは何かを悟ったように、真剣な表情をすると口から垂れた血を手でぬぐうように拭くと、クリスタルに体重を任せるように立ち上がった。
「カラバスの旦那・・・・・・先に行っててください。ここは俺が引き受けます」
「バカやろう!!見殺しにしていけっていうのか!!」
「カラバスの旦那・・・・・・どの道俺はもう助かりません。ここは絶対に死守します。だからカラバスの旦那は悪魔を倒しにいってください・・・・・・俺や村のみんなのためにも・・・・・・」
カラバスは顔をうつむかせ、歯を食いしばった。拳を力強く握りしめ、拳の中からは血が出てきていた。
「・・・・・・わかった。お前といた日々は片時も忘れない」
カラバスはサエンに背を向けると山頂を目指して走り出した。カラバスは後ろを決して振り返らずにただ山頂を目指した。
「・・・・・・ふぅ。さて、魔物達よ!!クリスタルの本当の使い方を教えてやる」
サエンはクリスタルを地面に突き立てると、右手でクリスタルの刀身を優しく撫でた。
「クリスタル本当の使い方はクリスタルの声を聞くこと!!クリスタル解放!!」
サエンがクリスタルの刀身を撫でると、あたりに心地よい音色が響き渡った。音色が響き終わると、魔物の身体は結晶へと変化し、凍りついたように魔物達が停止した。
サエンはクリスタルの刀身を引っ掻くと、キーンという音があたりに響き渡り、結晶となった魔物達の身体が粉々に砕け散った。
雪のような白い結晶が降り注ぐ中、サエンは膝をつき座っていた。
「魔物は・・・・・・もう来ないな」
魔物の死体が地を埋め尽くし、空から白い結晶が舞い散る中でサエンは満足そうに空を見上げていた。
「あとは頼んだぞ・・・・・・みんな・・・」
サエンは眠るように地面に倒れた。サエンはその後ピクリとも動かなかった。
あたりに白い結晶が舞い散る中、地面に突き立てたクリスタルはまるで勇敢な剣士の墓標のように見えた。




