王の勇姿
洞窟で休んでから四日がたった。レット達は洞窟から出発する準備を進めていた。皆が荷物をまとめる中ルミナスは膝を抱えて、座り込んでいた。
「どうしたんだよ、ルミナス?みんなもう行くってよ」
「・・・・・・レット。お前は怖くないのか?」
ルミナスの身体はガクガクと震えていた。顔も恐怖に包まれたように怯え、目の下には隈ができていた。
「俺は怖い・・・・・・あの悪魔を見てから足がすくむんだ」
怯えるルミナスを見てレットは震えるルミナスの肩に手をポンと置いた。
「ルミナス・・・・・・お前は王になるんだろ?上に立つ者が怯えてどうする?」
「しかし、レット・・・僕は・・・」
「しっかりしろよ。もしなにかあったら俺が守るさ」
レットの言葉を聞くと震えが止まったのかルミナスはゆっくりと立ち上がった。
「すまん・・・・・・情けない姿を見せた」
「いいってことよ」
二人は洞窟の外に出ようとしたその瞬間。
「ゴアァァァァァァァァァ」
耳が張り裂けるほどの何かの鳴き声が聞こえてきた。鳴き声で大気が震えた。
「なんだ!?」
レットとルミナスは急いで外に出ると、その鳴き声の主は上空にいた。
口からはみ出すほどの牙と頭に生えた鋭利な角、大きな巨体とその巨体を浮かせるほどの翼、身体は赤い鱗で覆われていた。
その姿はまるで伝承やおとぎ話に出てくるドラゴンのような姿をしていた。
「な!?ドラゴン!!あれも魔物なのか?」
外ではカラバスやニュイ、デュラン、サエン、エンベルトも上空のドラゴンを見て武器を構えていた。
「あぁ、あれも魔物だ。ドラゴンは強い・・・・・・だが個体数は少ない。恐らく今はあいつしかいないはずだ」
カラバスはサンダーロアーを構え、青白い矢をつがえいつでも撃てるようにしていた。
「恐らくマルガンテが私たちを探すために、放ったのでしょうね」
「カラバスの旦那、ここでこいつを倒しましょう。ここで倒せば悪魔との戦いが楽になる」
「そうだな!!先手必勝だ」
カラバスはそう言うとつがえていた青白い矢をドラゴンに向けて放った。矢はドラゴンの前足に命中したが鱗に刺さらず弾かれてしまった。
「く、サンダーロアーが刺さらねぇ」
ドラゴンはこちらに顔を向けると、口から炎を吐き出した。
「や、やばい!!」
「任せてください!!」
ニュイは腰から白い剣を抜くと、剣を縦に振った。空を斬った剣からまるで斬撃が飛んだように、炎を縦に裂きニュイ達は炎に当たらずに済んだ。
「さすがだな。ニュイ」
「ありがとうございますレット。しかしこれは魔力をすごく使うので数十回が限度です」
「どうやって倒すかあいつ」
(私に任せろ。貴様らは下がっていろ!!)
デュランはブルートランスを天に掲げると大きな叫びが脳内に響き始めた。
(貴様にブルートランスの本当の使い方を教えてやる!!ブルートランスに本当の食べ物を教えること・・・・・・ブルートランス解放!!)
デュランの身体をブルートランスから出てきた黒い膜が包み込んだ。
そして中からブルートランスを振り回して出てきたデュランの姿は青い獣の毛皮を鎧のように着込んだ、獣戦士のような姿をしており、胸元から赤い結晶が突き出していた。
(いくぞ!!)
デュランの背中から鳥のような大きな羽が生えると、翼を広げドラゴンに向かって飛翔した。
ドラゴンの背中に回り込み、デュランはブルートランスをドラゴンの背中に突き立てた。
(はぁぁぁぁぁ!!)
しかし、ドラゴンの鱗を貫くことはできなかった。
(くっ、血が足りないか・・・・・・)
デュランは自身の手の平を切り、ブルートランスにかけるように血を垂らした。
『うえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
突如ブルートランスから、嘔吐でもしたような声が響くと、デュランにまとわりついていた毛皮のような鎧がブルートランスに吸い込まれていった。
変身する前の姿に戻ったデュランは激しく動揺していた。
(どういうとだ!?まだ五分経っていないぞエンベルト!!)
「恐らくお前さんが闇魔法で生き返った影響じゃ。ブルートランスがお前さんの血をまずいと判断したのじゃ」
(クソ、グルメな武器だな!!うおっ!!)
デュランを払い落とすようにドラゴンの尻尾がデュランを背中から払い落とした。
デュランは地面に背中から勢いよく落ちるが、何事もなかったように立ち上がった。
(痛みを感じない・・・・・・骨もまるで始めからなかったように何も感じないし、問題なく動く)
「大丈夫ですか?デュラン」
(大丈夫ですニュイ様。それよりもお下がりください。ここは我々が)
レット達が空中にいるドラゴンを相手にしているなかルミナスはただ見ていることしかできなかった。
悔しそうに歯を食いしばるルミナスにエンベルトが肩を叩いてきた。
「力になれなくて歯がゆいかルミナス?」
「えぇだけど、それ以上に戦うのが怖いんです。足がすくんで動かないのです」
「ならお前さんに戦う武器をやろう」
エンベルトは手を差し出すと、そこには朱色をした菱形の結晶があった。
「これはメタモルフィア。自分の思い描いた武器を形にするオリジンシリーズじゃ」
「自分の思い描いた武器」
「もしお前さんに少しの勇気があるのなら・・・・・・これで戦うのじゃな。勇気がないのならこれで己の身を守ることじゃ」
ルミナスはメタモルフィアを受け取り、握りしめた。
「・・・・・・僕は」
一方ドラゴンと戦っていたレット達は、空中にいるドラゴンに手も足も出なかった。
空中にいるため、攻撃が届かず鱗が硬すぎるため攻撃が届かない。
するとドラゴンが大きく息を吸い込んだ。恐らく先ほどのように炎を放つ気だ。
「やばい!!また炎が来るぞ」
「まずいです。魔力を使いすぎました。先ほどのような刃は放てません」
「万事急須すか」
皆が焦る中ドラゴンの口から炎が吐き出された。
レット達は炎に飲み込まれたと思った、その時。
炎を塞ぐように、朱色の盾がドラゴンとレット達を遮るように現れた。
「助かった?」
ドラゴンが炎を吐き終えると朱色の盾は形を変えて、元に戻り菱形の結晶となった。
ルミナスの手の中に戻りながら。
「ルミナス!!」
レットが嬉しそうにルミナスに駆け寄るとルミナスは迷いが晴れたように爽やかな笑みを向けた。
「待たせたなレット」
「遅いぜ。全くお前は」
「王の初陣だ。ちゃんと勇姿をその目に刻めよ」
「あぁ!!」
ルミナスはメタモルフィアを巨大な剣に変えた。そして剣を大きく振ると、ドラゴンを空中から叩き落とした。
「すげぇねルミナス。お前そんなに力あったのか!!」
「いやこの武器がすごく軽いんだ。思った通りに動かせる」
ドラゴンは起き上がると、また大きく息を吸い込み始めた。
「やばい、またあれが来る」
「任せろ、レット。メタモルフィアの本当の使い方を見せてやる」
ルミナスはメタモルフィアを掲げると、手の中で握りつぶした。
「メタモルフィアの本当の使い方はメタモルフィアに形を与えること・・・・・・メタモルフィア解放!!」
メタモルフィアを握りつぶした手の中から、朱色の液体がルミナスを包み込んだ。そして、液体は固まるとルミナスの身体を鎧のように包み込んだ。
「エンベルトさん!!頼みます!!」
「任された!!」
ルミナスは身を丸めると、エンベルトはルミナスを持ち上げドラゴン目掛けてぶん投げた。
そして、ルミナスはドラゴンの口の中に飲み込まれていった。
「何やってんだ!!テメェエンベルト!!」
「うるさいのぉ・・・・・・貴様が仕えると決めた王じゃろ?なら信じて王の勇姿を目に納めろ」
突如としてドラゴンの身体から朱色の棘のような物が飛び出してきた。
朱色の棘はドラゴンの身体中から飛び出すと、ドラゴンの身体中から血が流れ始め、そのままドラゴンは動かなくなった。
そしてドラゴンの口の中から朱色の鎧を纏ったルミナスが出てきた。
「え!?どうなってるんだ」
「なるほど体内からドラゴンを串刺しにしたのか。やるなルミナス」
「さすがだぜ。ルミナス!!」
カラバスとサエンが肩を叩いて、ルミナスを称賛すると、ルミナスは嬉しそうに笑みを見せた。
ルミナスはゆっくりとレットに近づくと、お互い拳を合わせた。
「どうだった。お前が仕える王は?龍殺しで箔がついたか?」
「あぁ勇気ある戦いだったぜ我が王よ」
レットとルミナスはお互い笑い合うのであった。




