傭兵騎士
一握りの勇気で勝利をもたらすのなら喜んでこの勇気を差し出そう
過ちを清算できるのならこの命を喜んで差し出そう
夜の酒場、仕事終わりの人々が疲れを癒すために酒や料理を食べ賑やかに騒ぐ。
そのなか一人の男がテーブルとちまちまとつまみを食べながら酒を飲んでいた。
彼の名前はカレッジ・スペード。年は見た目だけなら二十代前半に見え、狼の体毛のようにつややかな銀髪に二本の剣を腰に携えている。菱形のペンダントを揺らしながら酒を飲む。
「おまたせ、待たせたかしら」
一人の妖艶な女性が長い黒い髪をたなびかせ、カレッジに声をかけると、向かいの椅子に腰掛ける。
「待ちましたよ。レミアさん。じゃあ報酬の話をしましょう」
「あら、仕事もしてないのにもう報酬の話?あなたどれだけギャンブルにつぎこんだの!?」
「安いつまみを食べられるぐらいには・・・」
開き直りながらヘラヘラ笑うカレッジにレミアは呆れた表情を浮かべた。
店員に酒を注文し、レミアは胸元から紙を一枚取り出し机の上に置いた。
「隣の町の貴族からの依頼よ。昨日屋敷に盗みが入って取られた宝石を取り返してほしいらしいわ。まぁ犯人は盗賊騎士団な。屋敷にエンブレムが落ちてたらしいし」
盗賊騎士団。最近巷で話題になっている盗賊組織。元騎士の荒くれものが集まった組織で武力による略奪と殺しを行い暴れ回っている。
「なるほど。でどこにいるんだそいつら」
「知らないわ。それを探すことから始めなさいな」
「えぇぇぇーーー!!情報屋なんだからそこは調べといてくださいよ!!」
驚くカレッジにレミアは手のひらを開きカレッジに差し出す。情報は金で買えと言いたそうに笑顔をうかべながら。
「くっ!?」
カレッジはズボンのポケットから銀貨3枚を出すと「どうも」とレミアは笑顔で銀貨を受け取った。
「この町にいるわよ」
「クソッ!!聞かなきゃよかった!!」
カレッジは大声をあげ後悔しているとレミアは店員から酒を受け取り飲み始める。
「早く行かないと報酬取られちゃうわよ。貴族だから相当高いし、他の傭兵も狙ってるわよ」
カレッジは机の上に銀貨を置くと、店の外に飛び出した。外の暗闇に溶けるようにカレッジが消えていく。
それを見ながらレミアは酒とカレッジが置いてあったつまみを食べ始める。
「お待たせしたかな。我が愛しき女神よ」
レミアに突然男が話しかけてきた。胡散臭いセリフを無視しながら酒を淡々と飲み続けるレミアの向かいに男が座る。
オールバックの黒い髪。白いスカーフを首元に巻き、獣のようにギラついた赤い目は男の獰猛さが伝わってくる。
「久しぶりね。アイスノック、仕事はどう?」
「あぁ冷たいところも素敵だ・・・盗賊騎士団の用心棒は順調にいってますよ」
「そう・・・・・・ところでさっきカレッジにあったわよ」
男はカレッジの名を聞くとニンマリと笑みを浮かべた。
「王国が滅びてから四年・・・再会が楽しみだ」
「あら再会じゃなくて、あなたは戦うのが楽しみじゃないの?」
二人は酒を飲みながら淡々と朝まで話続けた。