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登校前

次の日、目が覚めた僕はこれまでにないほど清々しい目覚めだった。これまでのような身体が重たい感覚もなく頭もちっとも痛くない。


これほどまでにスッキリとした目覚めは随分と久しぶりだった。なんだか頭の中に掛かっていた霧が晴れたみたいだ。


僕はベッドから立ち上がった。うん。やっぱり普段より足取りが軽い。どうしてだろう?余計な期待をしなくなって理想の生活を夢見なくなったからだろうか?


うーん。まぁどうでもいいか!


僕は部屋から出て階段を降り洗面台に向かう。どうしても僕の姿を二人に見せてしまうがそこは許して欲しい。僕だって寝ている間に脂でギトギトになった顔で学校には行きたくないからね!


リビングに着くと志那さんがいた。おぉっと…申し訳ない。朝から僕の顔を見せてしまった。僕の醜くい顔なんて見たくないだろうからね。


「か、叶人!」


よもや話しかけられるとは思っていなかった僕は驚いてしまった。


「はい?どうかしましたか?」


僕がそう聞くと志那さんは目線を左右に小さく振ってから口を開いた。


「お、おはよう…」


どうしたと言うのだろう?今までの志那さんなら僕が挨拶しても目を合わせずに返してくれたはずなのに。今日は目をしっかり見て挨拶してくている。


「?おはようございます」


な、なんと…わざわざ嫌いな僕にまで挨拶をしてくれるなんて…志那さんはなんてお優しいお方なのだろう…誰だよ美人はみんな性格悪いなんて言ったやつ!


でも優しいと言っても限度があるよね!不快な想いをさせないようにできるだけ迅速に顔を洗って自分の部屋に戻ろう。


そう思い洗面台で顔を洗って部屋に戻ろうとすると階段から花梨さんが降りてきた。


僕は降りてくる花梨さんの邪魔にならないように階段の下で待っているといつものようにそのまま花梨さんが通り…過ぎなかった。おや?


「…」


僕の目の前で無言で立っている。え?なんです?もしかしたて憎みすぎて腹に一発入れられたりするの?で、出来れば優しくお願いします…


「…おはよ」


いつ殴られるのかとプルプル震えているとそんな言葉がかけられた。


「おはようございます?」


これまた驚いた!本当にどうしたのだろう?今まで挨拶をしてこなかった花梨さんが急に挨拶をしてくれた。うーん。憎さが限界突破しておかしくなってしまったのだろうか?おっと、これは流石に失礼だよね。まぁいいか!花梨様の崇高な考えは凡人である僕には理解できないだろうからね!


挨拶してきてくれた花梨さんは顔を歪ませてそそくさと洗面台に向かってしまった。やっぱり憎い僕に挨拶をされて不愉快だったんだろうなぁ…でも挨拶をされたら返さないとね!それは人間として最低限必要なことだろう。いくら疎まれていようと憎まれていようともね。


あ、ご飯。


僕はご飯のことを思い出して上り切りかけていた階段を再び降りた。そして志那さんに声を掛ける。


「志那さん」


「っ!な、何かしら?!」


うわびっくりした!志那さんがかなり大きい声でそう聞いてきた。自分の声で僕の声をかき消したいのだろうか?なんとも脳筋な…


「朝ごはんを作りたいのでキッチンを借りてもいいですか?」


「そ、それなら今日から私が作るから食べて行って?」


ん?そういえばさっきからいい匂いがリビングに広がっている。


「えっと… いいんですか?」


流石にここまで気を使われたら申し訳ないな。


「あ、当たり前でしょ?」


「ではお言葉に甘えさせてもらいます」


こんな僕にまで朝ごはんを作ってくれるなんて…志那さんは聖母マリアなのだろうか?


僕は朝食が用意されているテーブルの前に行き椅子に着く。


「私はもう会社に行かないといけないから…」


そう言った志那さんは会社に向かった。


「頂きます」


食前の挨拶を済ませ朝食を食べ始める。僕の横では既に花梨さんがご飯を食べていた。


リビングには僕と花梨さんのご飯を食べる音だけが響く。


「…お母さんのご飯なんて久しぶりね」


花梨さんがそう言ってくる。


「え?昨日の晩御飯も志那さんのご飯でしたよね?」


昨日は志那さんが気まぐれで僕の分まで作ってくれたと思っていたけどもしかして毎日作ってくれる気なのかな?そんなの申し訳なさ過ぎる。自分で作らないとな。


「あ、朝ごはんがってことよ!」


「え?晩御飯も久しぶりでしたよね?」


確かそうだったはずだ。僕と花梨さんさ志那さんからお金を貰って「それで好きなものを食べて」と言われていた。


「ど、どっちだっていいでしょ!?」


朝から花梨さんを怒らせてしまった…だから僕はダメなんだよなー。そりゃあ憎まれますわ。これ以上花梨さんが嫌な想いをする前にさっさと学校に行こう。


「ご馳走様でした」


「ぁ…」


僕はそう言って食器をシンクに持っていく。そして素早く洗うと自分の部屋に戻った。


「さて、学校に行こう」


そう言って僕は家を出た。

志那ママは聖母マリア


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