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ショートショート5月〜4回目

タクシー

作者: たかさば
掲載日:2023/05/17

「へい!タクシー!」


 目の前に、一台の黄色い車がとまった。


 後部座席のドアがあく。


「どちらまで?」


「遊園地までね」


 俺は、遊びたい気持ちをタクシーに押し込んだ。

 ……これで発散できるだろう。


 ばん!


 タクシーのドアが閉まり、緩やかに発進した。


 俺はスッキリした気分で、仕事に向かった。




「へい!タクシー!」


 目の前に、一台の緑色の車がとまった。


 後部座席のドアがあく。


「どちらまで?」


「温泉まで」


 俺は、癒やされたい気持ちをタクシーに押し込んだ。

 ……これで充電できるだろう。


 ばん!


 タクシーのドアが閉まり、緩やかに発進した。


 俺は爽快な気分で、仕事に向かった。




「タクシー!」


 目の前に、一台の茶色い車がとまった。


 後部座席のドアがあく。


「どちらまで?」


「居酒屋まで…」


 俺は、忘れたい気持ちをタクシーに押し込んだ。

 ……これで集中できるだろう。


 ばん!


 タクシーのドアが閉まり、緩やかに発進した。


 俺は晴れ晴れしい気分で、仕事に向かった。




「タクシー」


 目の前に、一台の水色の車がとまった。


 後部座席のドアがあく。


「どちらまで?」


「…お寺まで」


 俺は、反省する気持ちをタクシーに押し込んだ。

 ……これで奮起できるだろう。


 ばん!


 タクシーのドアが閉まり、緩やかに発進した。


 俺は気分も新たに、仕事へ向かった。




 目の前に、一台のオレンジ色の車がとまった。


 後部座席のドアがあく。


「どちらまで?」


「故郷まで」


 俺は、望郷の念をタクシーに押し込んだ。

 ……これで落ち着く事ができるだろう。


 ばん!


 タクシーのドアが閉まり、緩やかに発進した。


 俺は開放された気分で、仕事に向かった。



「タクシー…」


 目の前に、一台の白い車がとまった。


 後部座席のドアがあく。


「どちらまで?」


「…病院、まで」


 俺は、ボロボロの身体をタクシーに押し込んだ。

 ……これで集中、できるだろう。


 ばん!


 タクシーのドアが閉まり、緩やかに発進した。



 ……あとは、やる気に任せよう。



 俺は、病院に向かう途中で、気を失い。



「…行き先、変更しますね」



 運転手に、返事をすることは……できず。



 華やかな毎日。

 忙しい日々。

 満たされた瞬間。

 後悔した場面。

 拠り所。

 執着した物。

 手放してきたもの。


 ただ、ただ、流れていく景色を、目で追うことしか……できず。



「お客さん、着きましたよ」


「…ありがとう」



 俺は、タクシーに重たい身体を置き去りにして。



 …穏やかに流れる、川の方へと、向かったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] モーレツサラリーマン哀歌、ですなぁ
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