表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/130

66 久々の再会

 玉座の間から出ると、待っていたカーリーが二人に尋ねる。


「で、どうだった?」


 何かあったのか、何を話したのか、何を感じたのか、大体そんな感じのことを聞きたいのだろう。


「まぁ、驚いたよね。知り合いが王になってたわけだし。ねぇミル?」

「はい。まさかあの人が王様になるなんて……」


 感想はと聞かれたら、二人は一番最初にそう答えた。

 やはり知り合いが突然国王になったのだから、インパクトはかなりのものだろう。


「じゃあ、家まで帰るぞ」

「え? あ、帰りも送ってくれるんですか?」

「ああ。ただまぁ、今後の外出はお前が何とかしろ。あの化物を倒したんだ、それくらい余裕だろう?」

「もちろんです」


 アルフが目覚めたということで、カーリーやシャルルが護衛につくのは今日で終わるとのことだ。

 戦力的に言えば、その二人を合わせても、アルフに勝てないレベルだろうから妥当だろう。

 それにカーリーは騎士なので、国からの仕事というものもある。


 そうして二人は、再び人混みの間を縫うように歩きながら、家へと帰っていった。


「……私はこれで失礼する」

「ああ。これまでありがとう」


 そしてカーリーが去るのを見送ってから、アルフとミルは家に入る。

 そんなドアが開く音を聞いてか、奥の方からダニエルが出てくる。

 少々慌てているというか、急いでいるというか、そんな様子だ。


「二人とも、今お客さんが来ていて……」

「客?」


 今、アルフと会いたいと言う人はたくさんいる。

 もちろん、全員を通すととんでもないことになるので、どれだけ偉い人であっても、基本的には誰も通さないことになっている。

 が、それでもダニエルが判断し、中へ通した人がいるらしい。


「応接室で待ってもらっている。アルフさんと、あとついでにミルちゃんにもに会いたいらしい」

「……分かった。すぐ行く」


 ダニエルの判断なら多分大丈夫だろうと、アルフは深く詳細は聞かず、応接室へ向かい、扉を開けた。


「え……」


 そして、アルフは驚く。

 国王となったクロードと対面した時とは異なり、ミルは特に反応していない。

 しかしアルフの表情から、その驚き様は今の方が上だろう。


「アルフ……無事、だったんだな……」

「……」


 そこにいたのは、困り顔をしたアルフの父親であるアルヴァンと、兄であるクリスハートだ。

 クリスハートの方は、これまでアルフが見てきたようなしかめっ面をしている。


「父さん、それに兄さんも……」


 そしてアルフの方も、驚きが薄れると、なんだか困ったような微妙な表情を見せる。

 少なくとも、再開をただ喜んでいるようには見えない。


 というのも、アルフは内心、家族に会いたくはなかった。

 確かに再会できたら嬉しいは嬉しい、それは事実なのだが、それよりも、奴隷になった自分というものを、家族に見せたくなかったのだ。

 もし会ったとしても、家族に迷惑をかけるかもしれないから。


 そしてそれは、アルフが英雄となった今も同じ。

 奴隷になってから数ヶ月ではあるが、その短い日々に形成された思考は、いつの間にか定着していたらしい。


「すまないな、突然やって来て。ただアルフが目を覚ましたと聞いたものだから……」

「そ、そうですか……」

「俺が言うのもアレだが……座らないのかい?」

「あ、いえ。じゃあ、失礼します」


 なんだか互いにぎこちない対応をしているようだ。

 アルフもその父であるアルヴァンも、互いにどう言葉をかければいいのか、迷っている感じがする。


「えっと、ご主人様、私は……」


 目の前の家族に気を取られていたアルフだったが、耳にミルの声が入ってきて、その存在を思い出す。

 色々と緊張しまくっていたせいで、完全に頭から抜け落ちていたみたいだ。


「あ、ミルは……あー、座って」


 アルヴァンとクリスハートの顔色を伺いながら、アルフはミルに、隣に座るように促す。

 身内である自分とは違って、ミルは二人にとっては全くの無関係の奴隷でしかない。

 だからどのようにさせるのか、それは慎重に決めなければならない。


「何と、言えばいいものか。思わず来てしまったが、こうして向かい合うと、分からなくなるな……」


 だが、そんなアルフの考えとは裏腹に、アルヴァンはただ、アルフに対して何を言えばいいのかを考えていた様子。

 そして数秒考えた後、彼は再び口を動かす。


「まぁ、なんだ……奴隷になって、辛いこともあっただろうが……俺は、アルフが生きていて嬉しかったよ」


 色々な感情が混ざった末の、微妙に歪んだ表情。

 息子が受けた苦しみを想像し、どんな言葉をかければいいのか苦悩して出てきた言葉、それに対しても不安を拭えない。

 だがそれでいて、純粋に無事が確認できて嬉しかったといった、複数の感情が混ざりあった、そんな顔だった。


「ところで、そちらはミル、だったか? 噂だと恋人という話もあったが……」

「えっ?」

「知らないのか? もっと言うなら、もう結婚してるっていう噂もあるぞ?」

「はい!?」


 かなり緊張していたアルフだったが、アルヴァンの言葉で、それは吹っ飛んだ。


「いや何でそんなことに……」

「え? いや、あんな手を繋いで帰る所を見せられたら、誰だって親密な関係だってことは分かる」

「親密……まぁ、確かに親密ではあるけど……付き合ってはないですよ?」

「うん? 付き合ってないのか?」


 ネモとの戦闘時のことは、王都の全ての人の脳に映像として流されていた。

 そのせいもあって、アルフとミルの関係性は公に広まっていた。


 だが実際は、距離はかなり近いが、まだ付き合ってはいない。

 アルヴァンがその事実を知ると、あることを提案してきた。


「じゃあこれを期に付き合ったらどうだ? かなり距離が近いし、お似合いじゃないか」

「……あー、えっと……ミル?」


 アルフの方は、満更ではない様子。

 ミルの方を見て、反応をうかがうと、彼女は少し恥ずかしそうに、小さな声で答えた。


「……ご主人様とお付き合いできたら、私は嬉しいです」


 そして、アルフにそっと身体を寄せてくる。

 直接的な言葉はなくても、その心は誰であろうと容易に理解できることだろう。

 言葉にせずとも、二人は今ここで、恋人同士になったのだ。


「そうかそうか! これでついにアルフにも恋人ができたのかぁ!」


 そして喜ぶアルヴァン。

 その様子は、純粋に子の成長を実感し、祝う親そのものだ。

 父親自身が強引に作ったようなものではあるが、それでも本当に嬉しそうではあった。


「えっと、一応ミルは奴隷ですよ……? 父さんはそれでもいいんですか?」


 だが、体裁はどうであろうか。

 ここで付き合ったとして、家族に迷惑をかけるのではないかと、アルフは危惧し、そう尋ねる。

 しかしアルヴァンは、笑みを崩さずに堂々と答えた。


「いやいや、そんなことはどうでもいい。結局、アルフは嬉しいんだろう?」

「まぁ、はい」

「なら俺から言うことはない。お前が幸せならそれで充分だ」


 そうは言いながらも、アルヴァンにはある考えがあったらしく、ちょっと小さな声で続ける。


「まぁ内心を言うと、お前には恋人を作っていてほしかったってのはある。最近、家にお見合いの手紙が大量に来ててさぁ、困ってたんだよ」

「……つまり、付き合わせて断る口実にしたかったってこと?」

「まぁそれもあるけど、もちろん一番は! 親としては、お前が幸せなことだからな!」


 親として嬉しいという言葉は事実だろう。

 が、最近鬱陶しかったお見合いの手紙を切り捨てるための口実が欲しかったというのも、おそらく本心ではあるだろう。

 そのために、アルフとミルをくっつけようとしたわけだ。

 当然それは、二人の関係性を考えての提案だったことだろう。


 実際、あんな風に言いながらも、アルフの表情は柔らかいままだ。

 ミルと付き合うということは、アルフにとっても嬉しいことではあったのだ。




 そうしてしばらくの間、二人は最近の他愛もない話をした。

 最近の国の情勢とか、彼らが住む西区で広がっているちょっとした噂だとか、そういうことを色々と語り合った。


 その中で、騎士に戻らないかという提案がされたが、アルフはそれを拒否した。

 騎士に戻るということはつまり、家に戻るということではあるのだが……流石にそこまでする勇気は、アルフにはなかったようだ。

 もし家族に迷惑をかけたらどうしようと、心の中ではまだそう思っているようだ。


 そして、お別れの時間となった。


「さて、そろそろ俺達は行くが……アルフもミルも、いつでもうちに来ていいぞ?」

「じゃあその内また行きます」

「うむ! それじゃあ元気でな!」

「……元気で」


 そう言って、アルヴァンとクリスハートは応接室から出ていったのであった。




◆◇◆◇




 アルフが目覚めてから、あっという間に一日が終わっていった。


 やることはやって、アルフとミルは、一つのベッドの中に入り、横になる。


「……ついにミルと恋人かぁ」


 父親に強引に付き合わされた感じではあったが、アルフとしてはミルが好きだったので、本心から嬉しくはあった。

 が、以前からこうして一緒に寝ているし、大体一緒にいるからか、あまり実感はなかった。


「ご主人様」


 そんな中、ミルはアルフのことを見つめる。

 そして彼女はあろうことか、自らの意思で、アルフにそっと抱きつき、唇を重ねた。


 あまりに突然のことで、しかも予想すらしていなかったことだったため、アルフは目を白黒させてしまう。

 そこに、唇を離したミルは言う。


「ご主人様、好きです、大好きです」

「……!」


 ここまで直接的に愛を伝えてくるとは、アルフは思わなかった。

 驚きもあったが、何よりもそれは、アルフにとってとても嬉しいことだった。


「俺も、大好きだよ」


 元々は一目惚れでしかなかったが、好きなのは、守りたくなるのは、真実だ。

 ミルの健気な想いを受け、アルフは改めて、ミルのことを守り抜くことを決意するのであった。

お読みいただきありがとうございます!

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価の方をよろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!

ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ