警察官のかお
警察署を後にすると、先程まではちらほら見受けられた人出もほぼ無かった。
建物の明かりも消えてる所が多く、居酒屋や数少ない街灯の明かりだけで道は照されている。
...脇道から手が伸びてこようとも、気付くのは困難だ。
「ちゃんと俺の横を歩けよ」
沢木にしっかりと釘刺され、紗和は素直に従った。
肩を並べて歩くと、紗和の頭は沢木の上腕部分にしか達しない。それだけ身長差がある中、歩幅は大して変わらなかった。
...いや、きっと沢木が合わせてくれてるのだ。
「清宮」
紗和は沢木を見上げると、乱れた前髪の隙間から覗く、くっきりとした二重と目が合う。
「今の家族が嫌なら、抗え。声に出せ。...もし、難しいと感じたら、俺に連絡しろ。
家族の代わりにお前の本心聞いてやるし、お前の事ちゃんと見るから」
紗和は目を見開いた。
今紗和に優しくしてくれるのは、仕事だからだと思っていたから。事情聴取が終われば、沢木との関わりも無くなると勝手に思っていた。
「どうして...そこまでしてくれるんですか...?」
「どうしてって、そりゃあお前...」
頬を掻き、一呼吸置いてから沢木は答えた。
「誰もが平等に助けを求められる存在が、警察だ。
俺も昔は味方でいてくれる大人がいなくて、腐っていた時期があった。
...そういう奴らがいなくなって欲しくて、俺はこの仕事をしている」
折角見つけた信用出来る人。
事情聴取が終わったら縁が切れてしまうのは...嫌だ。
「警察官って、格好いいですね」
紗和は初めて笑みを見せた。