切実に
その時、紗和の張り詰めた気持ちが緩んだのか
ぐぅー
紗和の腹が盛大に鳴り、思わず腹を手で抑えた。
「ククク...まぁ、待ってろ。今、後輩に飯買いに行かせてるから」
羞恥心で沢木の方を見られず、そっぽ向いていた紗和だが...人としての魅力がないというのは、撤回しようと思った。
見た目は兎も角、陽子や明よりも遥かに紗和に寄り添ってくれる点では、充分に紗和の心を惹き付けている。
そして、その後。
紗和の目の前にはコンビニの弁当が置かれた。
「おま...これコンビニ弁当じゃねぇか!俺がリクエストした奴は!?」
「無茶言わないでくださいよ!この時間なんですから、そもそも店閉まってましたよ!コンビニで我慢してください!」
「ちぇっ...」
目の前で大の大人が子供のようなやり取りをしてるので、紗和は呆気にとられた。
「ったく...ケチくせぇな。この時間でも仕事頑張ってる奴はいるんだっての。
...ほら、食えよ」
沢木の後輩が出て行ってから、コンビニ弁当を2人食べ始めた。
わざわざお弁当温めてくれたらしい。ご飯も程よく温かく、充分に紗和の心を癒した。
「最近の高校生って何してんの?やっぱSNSか?イン○タとか」
「...まぁ。私はやってませんけど」
「清宮さんは、何してるの?」
「受験生なので勉強です」
「いや、それ以外でよ...この流れで、分かるだろ」
沢木は意外と話しやすい。先程から話し方も崩し始め、紗和が気を遣いすぎないようにしてくれてるようだ。
「読書とか、ですね」
「...典型的な優等生だな。もっとJK楽しめよ」
「いやいや。受験生ですってば」
弁当を平らげた頃には、紗和も沢木に慣れて口数が増えてきた。
「沢木さん、寝癖直さないんですか?」
「整えた所で、犯人追っ掛け回したりしてるうちに髪乱れるし。いちいち直すの面倒」
...顔は良いのに、勿体無い。
出来る事なら、格好よくなろうと努力してる人にその顔をあげて欲しい。
紗和は切実に思った。