募った思い、そして
「...どういう意味?」
「22時まで塾で勉強した私には何処かでご飯済ませろ、って言うくせに...遊び回っている弟が22時過ぎても帰らないって騒ぐ親ですよ?
迎えに来るわけありません」
これまで何度も期待して、裏切られた事か。
学校でクラスメイトと喧嘩になった時も、話も聞いて貰えず、全面的に紗和が悪者にされた。
...突き飛ばされて足を怪我してたのに、怪我の心配も何もして貰えず、1人泣いた覚えがある。
明だけが愛情を注がれ、募りに募った劣等感...そして、時刻は既に23時を回っているが、未だに食に辿り着けていない事実が
紗和を苛立たせていた。
「...分かったよ。俺も家族とは相性最悪だったから、こういう時に連絡入れられたくない気持ちも理解出来る」
沢木は意外とあっさり引いてくれ、紗和は驚いた。
「だが...こんな夜道を1人で帰らせる訳にもいかないから、事情聴取が終わったら俺が家まで送るよ」
あぁ...今まで陽子や明にこのような心配をされた事があっただろうか。
いや、無い。
そして、沢木は先程連絡先を書かせようと紗和に差し出したメモに何かを書き
「ちょっと待ってて」
そう言って、1度部屋を出ていった。
1分程で戻って来ると、沢木は
「清宮さんさ、まだご飯食べてないだろ?」
紗和は一言も言っていないのに、何故かそれを言い当てた。
「な、何で...?」
「さっき言ってただろ。22時まで塾で勉強した私には何処かでご飯済ませろ、って言うくせにって。
事件が起きたのは22時20分頃だから、それまでの空白の時間が短すぎるんだよ。
コンビニで買ったような様子も無いしな」
警察官なめんなよ、と沢木は最後に言った。