人影
紗和は学校を終え、徒歩10分の所にある塾で更に勉強して、塾を後にした。
その頃には22時を過ぎ、人出も少し減ってきた。
ご飯は済ませて来いと言われてるんだったと思い出し、コンビニにでも行こうと紗和が歩き出したその時。
陽子からメッセージが届いた。
≪明がまだ帰らない≫
夜遊びでもしてるんじゃないのか。
勉強して疲れている紗和には労いの一言もなく、遊び回っている明ばかりを気に掛ける陽子に若干の苛立ちを覚えながらも、紗和は
≪ざっと探してみる≫
そう返信し、明に電話を掛けてみた。
...明が電話に出る様子はない。
紗和は深い溜め息をつき、宛もなく歩き出した。
どのくらい経っただろうか。明の姿もなく、紗和の腹の虫も鳴り出した。
先にご飯を買おう。
そう思ったその矢先。
前方に踞る人影が目に入った。腹を抱えているようだ。
「あの...大丈夫ですか?」
紗和は思いきって声を掛けてみた。
「お...お腹...痛くて...」
スーツを着たサラリーマン風の男だった。
「え、えっとー...食べ過ぎ?」
「...さぁ...突然痛くなって...」
目の前で人が苦しんでるという緊急事態に、紗和はどうして良いのか分からず、焦り出す。
その様子を見た男は
「僕の家ね、すぐ近くなので...そこまで肩を貸してくれると助かります...」
そう紗和に言った。
「あ、はい。分かりました!」
この緊急事態に慣れてない紗和は、何も疑問に思わず、男の言葉に素直に従い、肩を貸そうと近寄った。
その瞬間。
紗和の目に、鋭く光る何かが映った。