表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

少しでも

「22時まで塾で勉強した私には何処かでご飯済ませろ、って言うくせに...遊び回っている弟が22時過ぎても帰らないって騒ぐ親ですよ?




迎えに来るわけありません」





弟がそれだけまだ目を離せない歳の場合や、母親が紗和をそれだけ信用してるという事も考えられる。

それだけ聞けば、親が迎えに来ないという根拠には欠けるが...




紗和の何処か諦めたような目が。

何かを思い出してるのか、まるで言いたい事を我慢して言葉を呑み込むような姿が。





それらを見て、紗和がそう思い込むそれなりの理由があるのだと沢木は思った。







「...分かったよ。俺も家族とは相性最悪だったから、こういう時に連絡入れられたくない気持ちも理解出来る」






「だが...こんな夜道を1人で帰らせる訳にもいかないから、事情聴取が終わったら俺が家まで送るよ」





本当に迎えに来ないような親ならば...そう思いたくないが、紗和の言葉を無責任に否定も出来ない。










「清宮さんさ、まだご飯食べてないだろ?」





彼女の心の傷が、少しでも癒えれば。

満足に食事を摂れなかった頃、求めていた食に辿り着けた感動は今でも忘れられず、食事は沢木の

元気の源である。





そして、後輩の高橋に、沢木の行きつけの店のハンバーグの持ち帰りを依頼した。






が。






「おま...これコンビニ弁当じゃねぇか!俺がリクエストした奴は!?」






「無茶言わないでくださいよ!この時間なんですから、そもそも店閉まってましたよ!コンビニで我慢してください!」






「ちぇっ...」







お酒にも辿り着けない上に、食べたい物も食べられない。

某芸人がよく言っているが、何て日だ。

...決して、コンビニ弁当が悪い訳じゃない。ただ、沢木の気分ではなかっただけだ。






だが、紗和がコンビニ弁当を夢中で食べる姿を見て、沢木はまぁ良いか、と思い直す。

紗和の表情がほんの少し、柔らかくなったから。

文句言って悪かったよ、高橋。






「最近の高校生って何してんの?やっぱSNSか?イン○タとか」




「...まぁ。私はやってませんけど」





「清宮さんは、何してるの?」





「受験生なので勉強です」






「いや、それ以外でよ...この流れで、分かるだろ」






「読書とか、ですね」







「...典型的な優等生だな。もっとJK楽しめよ」






「いやいや。受験生ですってば」





こんな真面目に生きている人間でも、理不尽な事に振り回され傷付く世の中に、うんざりする。

それでも懸命に生きなければならない。







「沢木さん、寝癖直さないんですか?」





事件で会った時よりも口数も増え、表情の変化も大きくなった紗和の姿を見て





酒を我慢して警察官である事を選んで良かったと、心から思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ