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自分と重ねて

男を逮捕し、沢木の連絡で来たパトカーで連行されるのを見届けた後。

沢木は、ずっと黙ってその場を見ていた女子高生に目を向けた。



夜中に補導されてる若者をよく見かけるが、彼らとはまた雰囲気が違う。

制服を着崩さず、髪も手を加えた様子はなく黒髪のストレートが夜風で(なび)いている。...遊びやお洒落を楽しんでいる訳ではなさそうだ。





「悪いんだけどさ、事情聴取協力してね」





事件のショックからか、身体のふらつきが目立ち...そして、光の宿らない目。

そんな女子高生の姿を見て、沢木は昔の自分と重ね



気が付けば、彼女に手を差し伸べていた。















沢木は先程出た職場に戻る羽目になり、同僚から同情の眼差しを向けられた。

全くだ、と言いたかったが...自分の後ろを歩く女子高生の不安な表情でキョロキョロ周りを見る姿を見て、その言葉を呑み込む。




事件の被害者だから、とはまた違う。

彼女には、別の何かを感じた。...事件とは別に、何かを心の奥に閉じ込めてる気が、何となく感じたのだ。




かつての自分が、母親から助けて欲しいと心でずっと願っていたように。








取調室に入っても、女子高生はずっと周りをキョロキョロしていた。

不安というよりは、物珍しいのが勝ってるのだろう。...微妙に、表情が違う。





「あー...どうも。沢木です。よろしく」






「...はい」





ただそれだけ言って、軽くお辞儀する。

お辞儀するだけまだ良いが、もうちょっと何か言えないものか。

なんて、心の中で突っ込む。






「早速だけど、君の名前は?」








「清宮紗和です」








「高校生?」








「はい。高3です」







勝手に女子高生だと思ってたが、間違っては無かったようだ。







「親御さんに迎えに来て貰うから、連絡先教えて」






女子高生...紗和は僅かに眉をひそめ、差し出したペンを持とうとしない。






「ん?どうした?」







「...連絡しないでください。惨めな思いしたくないです」






その時の声が、1番震えていた。

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