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白衣の天使は異世界ドクター  作者: さい
プロローグ
1/6

001話 合格発表

 PCのディスプレイの目の前で何度も何度も同じサイトをクリックしては"戻る"を押す作業を繰り返している若者がいた。神崎奏(22歳)、看護学生である。


 3月某日、看護師国家試験の合格者発表の日であった。看護師国家試験とは、最終学年を迎えた看護学生の殆どが受験する試験である。この試験に合格することで4月からは晴れて内定済みの病院で看護師として働くことが出来るのだ。奏は既に准看護師試験で合格をしているため、看護の国試が不合格だったとしても無職になるということはない。とはいえ、「准看護師」ではなく「看護師」としての勤務を希望している奏にとっては、既に保有権を獲得している准看護師としての資格などはあってないような感覚に近かった。


 奏が欲しているのはあくまで看護師の国家資格である。



「なかなか開かないなあ・・・回線が混み合ってるんだ。聞いてはいたけど、こんなにも待たされることになるとは」



 6万人以上の看護学生が、一斉に自らの合格を確かめるため、合格発表を行っている厚生労働省のホームページは毎年混み合っている。サーバー上仕方のないことではあるが、受験者側にとってはサイトを閲覧出来るまで待たされるこの時間は大変心臓に悪く感じるであろう。



「ま、まあ、たぶん大丈夫だと思うけどね。試験の出来は良いほうだったし・・・だ、大丈夫だよ...ね?」



 奏は大変優秀な学生であった。1年生の頃からコツコツと勉強を始め、2年生の夏には既に合格に必要なおおよそのボーダーラインとされている点数を獲得していた。さらに、模試でも常に学年1位、全国200位以内をキープするなど、まさに模範的な優等生である。本番の試験でも満点に近いような点数が取れた自信があった。


 そんな奏でも、やはり合格発表となると過度に緊張していた。



「うわああ、変なマークミスとかしてないよね??名前ちゃんと書いてたかなあ・・・なんか不安になってきた・・・」


 看護の国試合格率は90%前後であるため、奏のようにきっちりと勉強を積み重ねてきた学生が不合格となることはまずあり得ない。奏本人、極端に自己評価が低い人間というわけではないため、合格しているという確証があった。しかし、不安なものは不安なのである。ここまでの努力がマークミスなどのつまらないことで水の泡となってしまう未来を想像すると鳥肌が立つような思いに駆られる。



「まだかな・・・一思いに見させてくれえ・・・あっ」



 何度もサイトを開いては閉じる作業を繰り返すうち、遂にサーバーへと接続されるのであった。



「ふう・・・大丈夫、大丈夫だ・・・きっと番号はある・・・」



 奏は自分の受験番号が掲示されているであろう"35"より始まる番号が羅列されている箇所まで画面をスクロールした。スクロールを行う右手に過度な力が入っているが、それに気づかないほど画面に見入っていた。


 そして、番号を探し始めて15秒後、奏は目当ての数字を発見した



「あ、あった・・・受験番号だ・・・!」


「よ、よかったあ〜・・・」



 サイトをなかなか開けない時から既に前傾姿勢となっていたが、緊張の糸が解けたことでようやく深く背もたれに腰掛け安堵した



「これで来月から看護師として働けるんだ・・・!」



 看護師、という職業に対して、奏は幼い頃から憧れていた。実習などを通し、看護師の辛さを体感したうえでも「辞めたい」と思うようなことは一度もなかった。むしろ、「絶対に看護師になってやる」と奮起していた。


 

「やるぞ・・・目の前の患者さんのために!」



 奏は自らを鼓舞するようにそう宣言した。これから出会う患者のために更に知識を身につけ、様々な技術を向上させ、少しでも早く退院できるように、少しでも苦痛を和らげ死を迎えられるように促していくのだと。そういった意図を持って、誇り高く宣言した。


 そのときだった



「(あ、あれ・・・?急に目の前が暗く、、ふらつく、、起立性低血圧か・・・?)」



 起立性低血圧とは座っている状態などから急に立ち上がったときに一過性に生じる低血圧状態のことである。原因は様々だが、急に立つことにより体内の血液が重力に逆らって頭部まで移動する力が足りず、脳への血液量が一時的に不足することなどがあげられる。


 奏は激しいふらつきや目の前に大きなもやがかかるといった症状などから瞬時に起立性低血圧を疑った。



「(あれ、でも別に立ち上がってないぞ・・・)」



 違う、起立性低血圧ではない。そう悟ったときには既に奏は意識を失っていた。



 そして、次に目覚めたとき、奏の目の前には信じられない光景が広がっているのであった。

初めまして、さいと申します。医療ものとファンタジー系を融合させたような作品に出来ればなあと思っております。

作品に登場する病気などは基本的に実在するものを扱うので、ついでに病気の説明なども兼ねて行っていきたいと思います(イメージとしてははた○く細胞みたいな)。

今後ともよろしくお願いします!



・起立性低血圧

 立ち上がったときなどに、重力に逆らって頭部まで移動する血液の勢いが足りず、一時的に脳への血液量が不足することなどによって生じる。原因は他にも自律神経症状など多岐に渡る

 発症すると、めまい、ふらつき、目の前が真っ暗になる、嘔気などの症状が出現するが、通常は1分も経たずに回復する。転倒防止のため、発症した場合はその場でしゃがむなどすることが望ましい

 一般的には「立ちくらみ」と呼ばれている

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