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こだま憑き  作者: ブルージャム
第四部 平成編
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森林の剣  歴史探訪の会 6

「お主も、わしと同じか? 今の世のヒトに捕らわれておるのか?」

「わしは、捕らわれておるとは思っておらぬ」

「では、なんじゃ? お主みずから、その者に取りついておるのか?」

 吹負は、怒鳴った。


今の自分の状況を、いまだ受け入れてはいないようだった。

「わしにも、まだわからんが、気がつくと、この者のなかにいたのじゃ」

 偽庵は、静かに答え、ふたたび霊刀をかまえた。


「――待ってくれ!」

 武は、必死で偽庵と吹負のあいだに割り込んだ。


 吹負は、偽庵の動作をみて、眼玉を、またぐるりと動かし、肩から上に剣をふりあげた

「――どかぬか! のちの世の者とて、容赦はせぬぞ!」

「待ってくれ! 戦う理由がないだろ!?」

「わしの憑いている、この者は、おぬしらを嫌っておる。――それだけで、充分な理由であろう」


「待て、待て。永山さんは、歴史好きの、優しい女性だ。殺し合いなど、したいはずがない!」

 斎藤さんが、震える手を握り締め、よろよろと武の隣に出てきた。


 吹負は首を突き出し、眼をぎろりと光らせ、武たち三人を、にらみつけたが、それでも、振りあげた剣を脇におろした。


「おおとものふけい、と名のられたな。わしは、室町殿の治める世に生きた者で、たまたま剣を覚えた眼医者じゃ。――お主の世では、誰がこの国、にっぽんを治めておったのじゃ?」

 偽庵は、低いがよく響く声で問いかけた。


 吹負は、吠えるような声を出した。

「にっぽんとは、なんじゃ? そのような土地は知らぬ。わが王は、大海人皇子さまよ! わが王は、王となられてから、世を良くするために、戦ってこられた。われは、王のために、わが剣をふるうのみ!」


「ああっ! 大伴吹負! 思い出しましたぞ! 壬申の乱の英雄じゃ!」

「わしの名を知っておる者がいたのか? あの大乱を覚えておるのか?」


「壬申の乱? 大海人皇子と大友皇子が争った?」

 斎藤さんが震えるこぶしを握り締め、ごくりとつばを飲み、声をあげた守口さんに尋ねた。


「そうじゃ。勝った大海人皇子が、天武天皇となられた、あの戦いじゃ!」

「吹負殿は、大海人皇子側で戦った方なのか?」

「そうじゃ。乱の初期の戦いで、一度は負けたのじゃが、兵を集めて再起し、最後は、大友皇子の軍を押し返したのじゃ。壬申の乱一番の英雄じゃ!」


「わが王は、王のくらいにつかれてから、休む間もなく働いておられた。やはり、後の世まで、名前が残っておったのじゃな……」

 吹負は、感無量といったていで、つぶやくと、剣をさやにおさめた。



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