森林の剣 祖父とこだま憑き
白石さんは、一瞬、眼をつむった。が、すぐに大きな溜め息をついた。
「藤原さんが、神社で倒れているのがみつかって、亡くなられているのがわかったとき、そのことは、会のみんなの間で、激しい議論になりました。〝こだま憑き〟になろうとして、体調を崩したんじゃないかって――」
「でも、結局、そのことを藤原さんの親族の方に告げられませんでした。あまりにも、科学的根拠に乏しい話ですし……。会員の誰も、藤原さんに強要したわけじゃない。――自己責任だという方もおられて……」
藤原さんが、怒りをなんとか押さえ込んだ表情で、問いつめた。
「祖父は、どんなことをやってたんですか? 誰かと一緒に、実験していたんじゃないんですか?」
岩瀬も、藤原さんの祖父がひとりでやっていたとは、思えなかった。
〝こだま憑き〟になる実験をしたとき、客観的に、外から実験を観察する人間が、どうしても必要だ。実験のあいだ、被験者本人が、常に冷静でいられるか、わからないのだから。
「世話役の斎藤さんに聞いてみたら、どうだろう? 藤原さんのお孫さんだといえば、少々手間でも、動いてくれるんじゃないかな?」
人の良い白石さんのご主人が訊いてくれた。
白石さんは、あごに手を当てて、考え込んだ。
「斎藤さんに連絡をとってみます。藤原さんのお孫さんということを話せば、会合に参加は無理でも、藤原さんと親しかった方に紹介してくださるかもしれません」
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岩瀬は、藤原さんとともにマンションを出ると、白石さんの部屋の方を見あげた。
「斎藤さんという世話役の人が、話のわかる人だったらいいんですが……」
「白石さんの話だと、たんなる世話役で、会長というような役職ではないから、強くはいえないだろうという事だから――」
藤原さんは、溜め息をついた。
「まあ、期待しないで待っていましょう。だめだったら、時間をおいて、もう一回頼んでみてもよいし……」
腹が減ったふたりは、いっしょに定食屋に行き、それぞれ、焼きそばと中華そばを食べた。
岩瀬が持っていた藤原さんの祖父の手紙写真をみながら、次に訪問できる人を物色した。何名かの候補を選び、白石さんから、良い返事がなければ、その人たちを訪ねることにした。




