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こだま憑き  作者: ブルージャム
第四部 平成編
66/73

森林の剣  祖父の実験

 これは、当たりかもしれない。

「それは、どなたですか?」

「ごめんなさい。名前を教えるのは、その方の許可をとってからでよいかしら? 気難しい方もおられてね――」


 白石さんのご主人が、初めて口をはさんだ。

「すいませんな。ほんとに、面倒くさい人がいるんですよ」

「その、御霊を宿せると、話されてた人でしょうか?」


 白石さんは、うなずいた。

「その方も、悪い方ではないんです。でも、頑固なところがあって、特に歴史の謎とされるようなこととなると、論争にはいって一歩もひかないんです」


「その、会の会合に、なんとか参加させていただけないでしょうか?」

 白石さんは、首をふった。

「無理です。会員以外を参加させたくないとおっしゃる方が数人いて……。代表の方も名ばかりで、そういった方を抑えることができないですし」

「そうですか。――なら、しかたありませんが……」

 岩瀬は、腕をくみ、考え込んだ。

 なんとか、その御霊を宿せると言い放っている人物と会えないものだろうか?


「――いま、話題になっている大石川の橋に出現するよろい武者のことを知っていますか?」

 岩瀬は、思い切ってよろい武者の話を出した。

「……ネットのニュースで観ました。おかしな事件だと、うちの人とも話していたんです」

 白石さんも、話題が変わった事にほっとしたらしく、穏やかな声でこたえた。


「よろい武者のことは、会のなかで、話題になったりしませんか?」

「ああ、それでしたら、この間、話題にのぼってましたね。みなさん、興味がおありだったみたいで……。もし、本物の亡霊なら、いつの時代の(いくさ)の犠牲者だろうと……。平安期の、この合戦ではないかとか、さかんに議論されてました。」


 岩瀬は、思い切っていった。

「俺は、そのよろい武者に、橋の上で会ったんです!」

 白石さんは、困惑した様子で、

「会ったというのは、あなたも、報道に出ていた被害者のひとりなのかしら?」


「いえ、俺たちがよろい武者に会ったことは、報道関係者に話してないです。昔から、こういう超自然の事象に興味がありまして、大学の有志をつのって、出会える確率の高い時間帯を選んで、会いに行ったんです」

「……亡霊に、会ったのですか?」

 白石さんと、ご主人が、身を乗り出した。

 こういう話題は、嫌いではないらしい。

「亡霊、幽霊の(たぐい)では、ありませんでした」

「それは、どういう……?」


 岩瀬は、少し、劇的効果を狙ってひと呼吸おいた。

「……亡霊では、ありませんでした。生身の人間だったんです!」

「頭のおかしな人間の変装? そうではないかという人が、会のなかにも、いましたけれど……」

 岩瀬は、続けた。

「その人間は、憑かれていたのです。――〝こだま憑き〟だったんです」

「……そんな、まさか」

 白石さんは、ご主人と顔を見合わせた。


「俺、藤原の孫です。探訪の会に参加していた藤原は、俺の祖父です」

 それまで黙っていた藤原さんが、自分の素性を打ち明けた。

「祖父の家で、あなたの手紙をみつけました。ほかの会員の方の手紙も……。どれにも、大なり小なり〝こだま憑き〟について、書かれていました。特に一部の手紙には、〝こだま〟の呼び出し方、人に憑かせる方法が、具体的に記載されていました」


「祖父は、理由はわからないが、〝こだま憑き〟になりたかった。……だから、〝こだま憑き〟についての資料を、精力的に集めていた」

 藤原さんは、大きく息を吸って、吐いた。これからする発言の準備を終えたようだった。


「――あなた方の送った手紙を読んで、祖父は、〝こだま憑き〟になる実験をした」

 藤原さんは、白石さんたちを(にら)んだ。

「そのことが、祖父の死に、かかわっているのではありませんか?」

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