森林の剣 ご先祖様
「藤原さんと、手紙のやりとりをしておられたと思うのですが……」
夫婦は、顔を見合わせた。
白石さんが口を開いた。
「『歴史探訪の会』で親しくさせてもらって……。藤原さんが、熱心に、この地に伝わる〝こだま憑き〟について調べていたので、代々うちに伝わる古文書の内容を伝えてました。藤原さんは、ほかの会員にも声をかけていたみたいで……。本当に霊魂を呼びだせると考えていたみたい……」
「その、古文書をみせていただけませんか?」
夫婦は、また顔を見合わせた。
「ごめんなさい。ここには、その古文書はないの。うちの本家の金庫にしまい込んでいるわ。本家は、兄が継いでいるんだけど、古文書を家の外に持ち出すのを許してくれないの。すごく価値のあるものだと思っているみたい……」
「……そうですか。藤原さんへの手紙に書いていたこと以外で、〝こだま憑き〟に関して知っていることはありますか? 本家に何か口伝の形で伝わっているとか、ないでしょうか?」
岩瀬は、困惑している白石さんに、さらに問いかけた。何でもいいから、情報がほしかった。
白石さんは、一瞬、眼をつぶった。
「口伝というか、ご先祖様の御霊が、常に私たち一族を守ってくれていて、霊感の強い者は、御霊とお話ができると、祖母から、よく聞かされてはいました。――正直、真面目に受け取ってはいませんでした。でも……」
白石さんは、口をつぐんだ。
「でも……何でしょうか? ほかには、口外しませんので、お聞かせ願えないでしょうか?」
「会員のなかにも、代々伝わる古文書をお持ちの方がいて、本気で、ご先祖様の御霊と話ができる……それどころか、御霊を身に宿せると、おっしゃっている方がいました」




