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こだま憑き  作者: ブルージャム
第四部 平成編
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森林の剣  三人目はどこに

 武と茂は、その男を、汗だくになりながらかついで、斎藤さんの家に引き返した。

 斎藤さんは、インタホンで武たちの声を聞くと、どうしたのかと怪訝そうに問いかけてきた。


「お知り合いじゃないかと思って……連れてきました」

 そのとき、男が意識のないまま、うなり声をあげた。

 それを聞いた斎藤さんが、あわててドアを開け、飛び出してきた。


 武たちのかかえた男を見て、

「土浦さん!」

 斎藤さんは、名前を呼びながら、武たちと一緒に男をかついで、奥の居間に寝かせた。毛布を持ってきて、『土浦』と呼んだ男にかけた。濡らしたタオルで、額と首筋を、丁寧にふく。

 と、男は、眼をかすかに開き、武たちをみた。少したれ眼で、さっき出現していた土方歳三の〝こだま憑き〟とは似ても似つかぬ、灰色のあごひげを生やした、穏やかな顔の老人だった。

 斎藤さんは、居間に寝かせている老人は、土浦といい『歴史探訪の会』の熱心な会員だと教えてくれた。


 斎藤さんに土浦氏を頼んで、武たちは、いったん引き上げた。

 わからないことばかりだった。

 土浦氏が〝こだま憑き〟であることは、まちがいない。

 でも、なぜ、あそこいたのか? なぜ、襲ってきたのか? 武たちのことを、どこで知ったのか? 


 歩きながら、考え込んでいた茂が、ひとり言のように、前を向いたまま、

「斎藤さんしか、考えられない」

 と、ポツリといった。

「確かに、俺たちが斎藤さん宅を出たあと、連絡をとったということは、考えられるけど、あんなに早く来れるかな?」

「僕らと話しているとき、『歴史探訪の会』の冊子をとってくるといって、席をはずしたことがあったよね?」


「ああ、そういえば……」

 5分ぐらいだろうか。すぐ戻ってきて、『探訪の会』の冊子をみせてくれた。モノクロの色のない手刷りのもので、会員の旧所名跡を訪ねたときの、エッセイのようなものが載っていた。最後のページに、全会員の氏名が、これは手書きで記載されていた。


「階段を昇り降りする足音はしなかったし、1階の範囲内なら、5分は、かかりすぎじゃないだろうか?」

「う~ん。しまい込んだ冊子のありかを忘れて、探してたのかもしれない……」

 確かに、あのあいだに、土浦氏に、連絡をとったのかもしれない。あるいは、別の誰かに連絡し、そいつが土浦氏に、すぐさま伝えたのかもしれない。


 アパートに戻り、夕食代わりのフルーツ入りロールケーキを食べて、幸せにひたっていると、斎藤さんから、電話があった。

 土浦氏は、あのあと、元気を取り戻し、自宅に戻った。――いろいろ聞いたが、憑かれていたときのことを聞いても、記憶があいまいで、はっきりしたことは、教えてもらえなかったそうだ。


 だが、ケガ人が出るかもしれなかった事態に、覚悟を決めたのか、真剣な声で、次の『歴史探訪の会』の会合に出てほしいと依頼された。

 武は、ふたつ返事で引き受けた。隣の部屋に行き、茂にその事を伝えると、予想通り、自分も行くといってくれた。


「三人目の〝こだま憑き〟も、きっと『歴史探訪の会』の内部にいる……」

 茂は、いや偽庵は、武者震いしていた。

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