森林の剣 話し合い
「なかなか、おもしろい考えであるな。だが、あの大ムカデには、悪臭を放つ血肉という、実体があった。とりついた霊に、そのような実体を作り出す力があるのであろうか?」
「――ある!」
武は、強引に割り込んだ。
「どうやって、実体を作り出せるのか、メカニズムはわからないけど、身体をひとまわり大きくしたり、刀を出現させたり、それぐらいのことは、簡単にできる」
「まるで、憑かれたことがあるような言い方じゃな」
武は一瞬迷ったが、続けた。
「高校時代に憑かれたことがあるんだ……信じられんかもしれんけど」
「本当なのか!? 宮田!」
岩瀬が、驚いた顔で訊く。微妙に非難している口調になったのは、何でいってくれなかったんだという、隠していた武への腹立たしさ、気づかなかった自分へのくやしさがあるせいだ。
「俺のことは、あとで話すから……藤原さんに訊きたいことがある」
「なんであるかな?」
「剣豪として、力くらべ、技くらべをしたかったのは、わかる。強者との戦いを求めていたことも……。しかし、3つの橋でやらなくても、一か所でよかったのじゃないか?」
「わしは、ひとつの橋にしかいっておらん。一番近くの橋に行っていただけじゃ。身体がひとつしかないのだ。3つもの橋に、同時には行けぬ」
武は、黙り込んだ。
「3つの橋に、同時に落武者が現われたことは、何回かあるぞ。――調べたんだ。他の橋で被害にあった人たちも、力が抜け、疲労困憊の状態になったそうだから、間違いないと思う」
岩瀬が、困惑して首をふりながら、調べていたことを話した。
「どういうことじゃ? ほかの橋に現われたのは、この御仁ではなく、また別の〝こだま憑き〟じゃというのか?」
武は、偽庵の問いにうなずいた。
まだ、見知らぬ〝こだま憑き〟がいるのだ。探さなければならない。ケガ人が出る前に、何としてもみつけなければならない。




