森林の剣 激闘 その二
柳原は、背中を強く打ち、転がった。起き上がろうとするが、衝撃で息をつまらせ、両手を地面についたまま、あえいでいる。
武も、横腹を打ち、胃液が喉の奥まで、こみあげてきた。それでも、よろい武者の片腕を放さず、強引に背負いにもっていこうとした。
よろい武者は、自由になったもう一方の手で、腰に差した短刀を引き抜き、武に切りつけた。
切られた途端、武の全身から力が抜けた。武は、自分のなかの、命の核のようなものが、切られた気がした。切られた部分をみると、何も跡がなく、血も出ていない。が、眼にみえない傷口から、何か、霊気とでもいったらいいようなものが漏れ出ているのを感じた。
その瞬間、武は、こだま憑きとなっていた時のことを思い出した。武蔵にとりつかれ、戦ったときのことを……。ぼおっとした、あいまいな記憶しか残っていないが、あのときも、切られ、同様の感覚を体験したことを思い出した。
――こいつは、憑かれている……。
武は、はっきりと悟った。あの時と同じだった。
脱力し、よろい武者の片腕を放し、崩れ落ちた。地面に倒れながら、武者の方を、横目でチラッとみた。
武に切り付けた短刀の刃全部が、ゆれる青白い光につつまれ、しかもダンビラのごとく伸びていた。
よろい武者は、よろよろと立ち上がった柳原に、短刀を突き刺した。突き刺された柳原の腹からは、血はでなかったが、薄い蒸気のようなものが漂い出た。
柳原は、うつぶせに倒れ、そのまま動かなくなった。
蒼白になった岩瀬が、よろい武者に組みついた。ナギナタ女子ふたりに、逃げろと叫んでいる。
関さんが、果敢に武者に突進し、ナギナタで足を払った。
よろい武者は、岩瀬に組みつかれたまま、ふわっと浮き上がり、ナギナタをよけた。短刀を背にまわし、岩瀬に突き刺す。岩瀬が叫び声をあげ、背中から落ちた。
片山さんが、空いた武者の背中にナギナタを叩きつける。同時に、武者の足下まで迫った関さんが、ナギナタを切り上げる。
よろい武者は、眼を血ばしらせて咆哮し、素早く回転すると、第二撃を与えようと、振り下ろされた片山さんのナギナタをつかみ、引き寄せ、切りつけた。
片山さんは、とっさに、ナギナタを手放し、後ろに飛んだが、間に合わなかった。逃げ遅れたほうの足のすねを、武者の刀が切った。
片山さんは、そのまま、よろい武者の足下に崩れ落ちた。
関さんは、地面に降りたよろい武者の横から、片山さんの前に飛び込んだ。動きながら、ナギナタを回転させよろい武者の刀を持った手首に、切りつけた。
ナギナタが手首に届く前に、よろい武者が前に出た。ナギナタが、武者の腕に当たり、固い壁に当たったかのように跳ね返された。
跳ね返されたナギナタで、武者の顔を突くのと、武者の刀が関さんの脇に入るのが、ほぼ同時だった。
関さんは、ナギナタの一方の端で、武者の短刀を防いだはずだった。が、青白く輝く短刀の伸びた先が、ナギナタの柄をスッと通り過ぎた。
関さんも、片山さんに覆いかぶさるように倒れた。




