森林の剣 集合
アパートに帰ると、部屋にいた茂に、すぐ話した。
茂も、あきらめていたバンドのチケットが取れると知って喜んだ。
が、ふいに真顔になると、武をみた。
「ほんとの亡霊じゃないよね?」
「ああ、岩瀬は、生きている人間の仕業っていってたな。幽霊じゃないなら、いくらでも、やりようはある」
「岩瀬って、オカルトに相当くわしいっていうのは聞いてはいるけど。――橋を渡る日時は決まってるのかな? いっしょに行くよ」
「日時は、まだ決まってない。岩瀬から連絡がくる。俺も、いっしょに来てもらうつもりだった。……何も起こらないかもしれないけどな」
岩瀬から、数日後、連絡が来た。来週の火曜日は、どうかということだった。武は、茂から、夕方だったら、いつでもいいと聞いていたので、すぐにOKの返事をした。
特に準備することもない。体調を整えておくぐらいか――。
武は、その日、駅からアパートまでを走って帰った。
当日まで、このジョギングを続けるつもりだった。
他にも、レスリング部の人間を呼んでいるらしいし、ここまですることはないかもしれないが、運動不足で身体がなまっている。身体がよく動くようにしておくに、越したことはなかった。
★
祖父の家で何日か過ごした男は、庭の端の土の盛り上がりが、気になってしかたがなかった。
足で盛り上がりを蹴ってみた。土は柔らかく、たやすく削れた。
何回か蹴ってみたが、植物の芽や球根のようなものは、みあたらない。首をひねりながら、なおも蹴っていると、盛り上がりがほぼなくなるぐらいまで削れたとき、靴の先が、固いものに当たった。
植物の根か何かだろうか? しゃがんで、土や砂粒を払いのけると、金属のとがったモノが突き出ていた。さらに土を払うと、金属製の四角い缶のふたが現れた。
ブリキ缶だろうか。男は、家のなかから、祖父が使っていたに違いない杖をとってきて、くわ代わりに使い、ブリキ缶を掘り出した。
缶のふたは固く、なかなか開かなかった。結局、缶のよこを叩いてへこませ、ふたの下に指を突っ込んで、やっと開けた。
なかには、ビニール袋に入れられた便箋の束と、数枚のお札が入っていた。
男は、便箋を取り出し、一枚一枚熱心に読み始めた。
★
大学の裏門の前で、武たちは岩瀬と待ち合わせた。
「おおい。待ったか?」
岩瀬が、女性ふたりと、背の高い男性ひとりを引き連れてやってきた。
すでに陽は傾き、かなり影が伸びている。武たちは、約束の時刻の30分前には、集合場所に来ていて、熱中症対策の清涼飲料水を飲みながら、待っていた。
武も茂も、何かにつけて、これだから地方出身者は……と、いわれていた。約束の時刻に遅れて迷惑をかけてしまい、出身地の評判を下げるわけにはいかなかった。
「――いや、いま来た」
武が答えると、
「今日のメンバーを、紹介しておくからな――」
岩瀬は、後ろにいる三人を、それぞれ指さした。
「こちら、ナギナタ部の片山さん、関さん。それに、レスリング部の柳原。――みんな、腕に自信のある人たちだ」
紹介された女性のひとりが、
「腕に自信て……頑健なだけだよ。一応、練習用の先竹はめて、持ってきたけど」
腕にかかえた、長い袋にはいった棒状のものをみせる。
「うん。ありがと。――接近戦は、男ふたりにまかせて、離れたところから、相手を邪魔してほしいんだ」
「わかった。でも、ナギナタだから接近戦が不得意、というわけでもないのよ。――ねえ?」
片山さんが、隣の関さんに問いかけると、
「うん。いろいろな技術、技があってね。わたしは、接近戦のほうが得意なくらい……」
「まあ、前衛は、まかせてよ。何も持ってない方が、手加減しやすいし……。棒一本あると、打撃系の技は、軽く突いても、青あざができたりするから」
レスリング部の柳原が、素手なら負けないと、自信ありげにいう。
「宮田も、俺の後ろでみててよ。橋の幅は狭いし、ふたり並んで捕まえようとして、ぶつかったりすると、邪魔になるしね」
武は、何もいわず、うなずいた。
柔道をやめて、もう2年になる。現役の部活で、毎日やっている柳原には、かなわない。ずるいようだけど、柳原に頑張ってもらおう。




