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こだま憑き  作者: ブルージャム
第四部 平成編
48/73

森林の剣  集合

 アパートに帰ると、部屋にいた茂に、すぐ話した。

 茂も、あきらめていたバンドのチケットが取れると知って喜んだ。

 が、ふいに真顔になると、武をみた。

「ほんとの亡霊じゃないよね?」

「ああ、岩瀬は、生きている人間の仕業っていってたな。幽霊じゃないなら、いくらでも、やりようはある」

「岩瀬って、オカルトに相当くわしいっていうのは聞いてはいるけど。――橋を渡る日時は決まってるのかな? いっしょに行くよ」

「日時は、まだ決まってない。岩瀬から連絡がくる。俺も、いっしょに来てもらうつもりだった。……何も起こらないかもしれないけどな」


 岩瀬から、数日後、連絡が来た。来週の火曜日は、どうかということだった。武は、茂から、夕方だったら、いつでもいいと聞いていたので、すぐにOKの返事をした。

 特に準備することもない。体調を整えておくぐらいか――。

 武は、その日、駅からアパートまでを走って帰った。

 当日まで、このジョギングを続けるつもりだった。

 他にも、レスリング部の人間を呼んでいるらしいし、ここまですることはないかもしれないが、運動不足で身体がなまっている。身体がよく動くようにしておくに、越したことはなかった。


                 ★


 祖父の家で何日か過ごした男は、庭の端の土の盛り上がりが、気になってしかたがなかった。

 足で盛り上がりを蹴ってみた。土は柔らかく、たやすく削れた。

 何回か蹴ってみたが、植物の芽や球根のようなものは、みあたらない。首をひねりながら、なおも蹴っていると、盛り上がりがほぼなくなるぐらいまで削れたとき、靴の先が、固いものに当たった。


 植物の根か何かだろうか? しゃがんで、土や砂粒を払いのけると、金属のとがったモノが突き出ていた。さらに土を払うと、金属製の四角い缶のふたが現れた。

 ブリキ缶だろうか。男は、家のなかから、祖父が使っていたに違いない杖をとってきて、くわ代わりに使い、ブリキ缶を掘り出した。


 缶のふたは固く、なかなか開かなかった。結局、缶のよこを叩いてへこませ、ふたの下に指を突っ込んで、やっと開けた。

 なかには、ビニール袋に入れられた便箋の束と、数枚のお札が入っていた。

 男は、便箋を取り出し、一枚一枚熱心に読み始めた。 


                ★


 大学の裏門の前で、武たちは岩瀬と待ち合わせた。

「おおい。待ったか?」

 岩瀬が、女性ふたりと、背の高い男性ひとりを引き連れてやってきた。

 すでに陽は傾き、かなり影が伸びている。武たちは、約束の時刻の30分前には、集合場所に来ていて、熱中症対策の清涼飲料水を飲みながら、待っていた。

 武も茂も、何かにつけて、これだから地方出身者は……と、いわれていた。約束の時刻に遅れて迷惑をかけてしまい、出身地の評判を下げるわけにはいかなかった。


「――いや、いま来た」

 武が答えると、

「今日のメンバーを、紹介しておくからな――」

 岩瀬は、後ろにいる三人を、それぞれ指さした。

「こちら、ナギナタ部の片山さん、関さん。それに、レスリング部の柳原。――みんな、腕に自信のある人たちだ」


 紹介された女性のひとりが、

「腕に自信て……頑健なだけだよ。一応、練習用の先竹はめて、持ってきたけど」

 腕にかかえた、長い袋にはいった棒状のものをみせる。

「うん。ありがと。――接近戦は、男ふたりにまかせて、離れたところから、相手を邪魔してほしいんだ」

「わかった。でも、ナギナタだから接近戦が不得意、というわけでもないのよ。――ねえ?」

 片山さんが、隣の関さんに問いかけると、

「うん。いろいろな技術、技があってね。わたしは、接近戦のほうが得意なくらい……」


「まあ、前衛は、まかせてよ。何も持ってない方が、手加減しやすいし……。棒一本あると、打撃系の技は、軽く突いても、青あざができたりするから」

 レスリング部の柳原が、素手なら負けないと、自信ありげにいう。

「宮田も、俺の後ろでみててよ。橋の幅は狭いし、ふたり並んで捕まえようとして、ぶつかったりすると、邪魔になるしね」

 武は、何もいわず、うなずいた。

 柔道をやめて、もう2年になる。現役の部活で、毎日やっている柳原には、かなわない。ずるいようだけど、柳原に頑張ってもらおう。 

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