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こだま憑き  作者: ブルージャム
第三部 幕末編
32/73

旅立ちの剣  探索者

 ふろしきを背負った行商人が、村の家を一軒ずつまわっていた。

 主に薬、あとは生活に必要な雑貨を大阪から仕入れてきたといって売っている。

 にこにこした如才ない男で、庭先に座り込んで世間話を、よくしていた。

 三郎が、朝、家をでるとき、声をかけてきた。

 こんな早朝から、もう売りにまわっているようだ。


「坊ちゃん、お早いですねえ。武家の方で、こんな早く起きる人は初めてですよ」

 にこにこしながら、

「もう、道場を開けておられるんで?」

 三郎は、うさんくさげな顔を、行商人に向けた。

「道場は、まだじゃ。ちょっとした用事じゃ」

「木刀や竹刀の打ち合いで出来た傷に塗る薬は、いかがですかな?」

「間に合っておる」


 三郎は、追い払うように手を後ろに振って、昨日飯を運んでやった少年のもとに向かった。 

 あとから、小夜と祖母が上ってくる。それまでに、少年がまだ同じ場所にいるか確かめ、清潔な着物を着せ、身なりを整えてやりたかった。


 三郎は、着物の入った風呂敷包みを背負い、街道を北に進み始めた。

 あの傷では、疲れ果て眠っているだろう。ゆっくり上って、たくさん眠らせてやろう。小夜がきたら、休む暇もなくなるに違いない。小夜は、昨夜もあの少年のことを、寝る間際まで話していた。藩の役人や行商人以外で、まったく知らない人物が村に入るのは、何年ぶりだろう。

 小夜が興奮するのも無理はない。三郎は、自分も少なからず興奮しているのに気づき、苦笑いした。

 三郎は、橋の上の少年や小夜のことにばかり気を取られ、行商人がひそかに跡をつけているのに、気づいていなかった。  


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