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こだま憑き  作者: ブルージャム
第二部 江戸時代編
27/73

鬼婆の剣  鬼婆の説教

 千代の祖父は、伯父を送って、門のすぐ外まで出た。千代が試合に勝ってから、体調がよく、道場のまわりを少し歩くのが日課になっていた。

 ――やはり、心配事が減ったからだろう。

 寒い朝や夕方に、必ずといっていいくらい出ていた咳も、今のところおさまっている。

 伯父に初孫ができたことなど、のんびりと立ち話をしていると、男女のわめくような声が聞こえた。

 振り向くと、あばれる二郎の頭と源太の腕を、何が何でも放すものかと、がっしり抱え込んだ千代が戻ってきていた。

 千代は髪を振り乱し、顔を真っ赤にして息を切らし、なんとか逃げようとする二郎と源太を無理やり引きずっている。


 門の前にいる伯父を見ると、千代は、ばつが悪そうに、

「もう、用事は終わられたのですか?」

 いいながら、申し訳程度に、素早く頭をさげる。

 そうしながらも、暴れる二郎と源太を放そうとしない。逆に、より一層力を入れておさえつけている。

 祖父は、あきれた顔で声をかけた。

「仲が良いのもいいが、そんな様で出歩いていると、嫁の貰い手がなくなるぞ」

 千代の顔が赤くなった。

「よい、よい。・・・仲の良いご兄弟で何よりじゃ」

 伯父は、笑いながら、片手を背中越しに振ると帰っていった。よほどおかしかったのか、肩が震えていた。

 源太は、千代があいさつをしている隙に、すっと腕を抜いて逃げてしまった。

 残された二郎は、道場のなかに引っぱり込まれた。

 正座をさせられ、千代から説教を受けている。


 ――婚姻の約束が破棄されたことを・・・さて、いつ話したらよいかの。

 祖父は、悩みながら、道場にはいった。

 千代の大声での説教は、延々とつづき、近所にも響きわたっている。

 ――これでは、ますます鬼婆といわれるのう。

 祖父は苦笑いし、威厳のある顔をつくろって、千代の説教を止めるため、おもむろに口を開いた。



                      < 了 >


 

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