鬼婆の剣 対決
二郎とともに、道場への帰リ道を歩いていると、すれ違う町民に顔見知りがいて、おめでとうございます、御苦労様でした、と声をかけてくる。
もうすでに、千代たちの道場が勝ったことは、広まっているらしい。小さな藩だし、話題にとぼしいので、こういうことが広まるのは、あっという間だった。
試合に勝ったのだ。
ようやく、喜びが湧き上がってきた。
二郎の手を強く引っ張る。早く帰って、祖父に知らせなければ・・・。
二郎をせかし、急いで歩いていると、道場までの道のりのなかほどにある、竹林にさしかかった。
千代は立ち止まった。
「姉上?」
今度は、逆に二郎が千代の手を引っ張った。
が、千代は頑として動かない。
眉をよせ、竹藪の向こうを窺った。
何者かが、前方の竹藪のなかにいる気配がした。
「隠れて!」
千代は、二郎をそばの竹藪に隠れさせると、ゆっくりと前に進んだ。道にはみでて、目線をさえぎっていた竹の葉っぱを払いのける。
竹の葉が地面全体に敷き詰められた、少し広い空き地に出た。
「誰?」
千代は、繰り返した。
「誰?・・・出てきなさい!」
一拍おいて、隠れるのをあきらめたのか、がさごそと音をたてながら、ふたりの侍が出てきた。
ひとりは、森幸四郎だった。
もうひとりは見たことがない顔・・・たぶん、向こうの道場の門弟にちがいない。白っぽい顔色の、まだ二十歳をこえていない若い男だった。




