表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こだま憑き  作者: ブルージャム
第二部 江戸時代編
21/73

鬼婆の剣  試合終了

 清右ヱ門は、何度も何度も、千代の木刀を叩いてきた。

 千代が意外に素早く、巧みな足さばきで打ち込みをかわし、受け流すので、身体に打ち込むのをあきらめ、ひたすら木刀を折ろうとしている。

 わかっていながら、千代にはどうすることもできない。


 清右ヱ門の打ち込みを受けつづけるうち、ついにその時がきた。

 鈍い音。

 衝撃が走る。

 木刀の折れた半分、真ん中から刃先の部分が、あらぬほうへ弾けとんだ。

 清右ヱ門は満面に笑みを浮かべ、勝どきの声をあげた。打ち込んだ勢いのまま、素早く木刀を振りかぶる。激しくそれを打ちおろした。

 千代はひるむことなく、勢いのまま突っ込んだ。

 折れた木刀の先から、灰色の何かが素早く伸びた。鈍く灰色に光るそれは、さながら真剣のようにみえた。

 清右ヱ門の木刀は、灰色の刀にたやすく弾かれた。清右ヱ門の眼が、驚愕で見ひらかれた。灰色の刃は、そのまま清右ヱ門の胸に突き入り、背中まで突き通った。

蒼白な顔で前に倒れる清右ヱ門をよけられず、千代は正面からぶつかり、清右ヱ門を突き飛ばした。

清右ヱ門は、激しい音をたてて、床に転がった。ウオウ、ウオウとうめき声をあげている。


 千代も片膝をついた。

 指の先から、肩、足先まで震えが止まらない。硬く分厚いものを、長い時間をかけて突きぬいた後のように腰に力が入らない。

 木刀を見ると、伸びていた灰色の切っ先は消えていた。 

 振り返ると、清右ヱ門はうつ伏せに倒れたまま動いていない。突きぬいたはずの背中には、何の跡もなかった。血の跡もない。

「それまで!」

 見届け人が、声を張りあげた。

「勝者、伊田道場、千代殿!」

 見届け人は倒れた清右ヱ門に近寄り、上向かせ、息をしていることを確かめた。


 相手の道場の門人たちが、清右ヱ門に駆け寄った。清右ヱ門は息を吹きかえし、ぼんやりとしたまなざしで、まわりを見ている。

 森幸四郎も、いまや少しも隠そうとせず、清右ヱ門の介抱をしていた。 

森清右ヱ門、森幸四郎、ひょっとしたら親戚筋かもしれない。

 なんで気付かなかったのだろう?

 千代は、苦笑いをしながら立ち上がった。身体がまだ、重かった。二郎がささえようと、背中に手をまわしてくれる。


 別室に入り、二郎に手伝ってもらいながら着替えた。折れた木刀は、折れた半分と、飛んで行った半分(二郎が取ってきてくれていた) を、丁寧に布でつつみこみ、わきに抱えた。

 折れた木刀の先に、灰色の刃が伸びたことは不思議だけれど、あとで考えよう。

 力のすべてを使い切ってしまった・・・ひたすら休みたかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ