将来の夢はなんですか?
将来の夢はなんですか?
それは私が大嫌いな質問。
答えを委ねられているようで、強制されている質問。
なんでもいいよと言いながら、間違った答えは否定される質問。
見えないうちに縛られてしまう質問。
「あなたの夢はなんですか?」
「私の夢は建築士です」
嘘だ。本気で建築士になりたい人なんてほとんどいない。
「あなたの夢はなんですか?」
「私の夢はパティシエです」
嘘だ。本気でパティシエを目指している人なんているのだろうか。
「あなたの夢はなんですか?」
「私の夢は社会の役に立つことです」
嘘だ。本気でそう思っている人はいるはずがない。
それは本当に自分の夢ですか? 親に押し付けられたんじゃないんですか?
それが本当にやりたいことですか? 本当はもっと別のことがしたいんじゃないですか?
本当に心から願っていることですか? 自らを偽っているんじゃないですか?
毎日、十時過ぎまで寝ていたい。
毎日プリンが食べたい。
学校や仕事なんかせずに、誰にも迷惑をかけずにダラダラしていたい。
本当はそういうことを願いたいのではないですか?
そんな自由な夢なのに、なんでわざわざ修正させるんですか?
「毎日、十時過ぎまで寝ていたい」
「そんなことを卒業アルバムに書けるわけないだろう。書き直しだ」
「毎日プリンが食べたい」
「健康に悪いからダメに決まってるでしょう」
「毎日ダラダラしたい」
「頭おかしいんじゃない? そんなのできるわけないでしょ」
正直に将来の夢を考えたはずなのに、なんでそんなことを言われなければならないんですか?
将来の夢はなんですか?
将来就きたい職業はなんですか?
本来違うはずの質問が、なぜだかいつも重なって見える。
「将来の夢はなんですか?(将来就きたい職業はなんですか?)」
口から出している言葉が、本当に言いたいことと解離している。意味が異なってしまっている。
将来の夢はなんですか?
だから私はこの質問が大嫌いなのだ。
本当の夢は言えず、将来就きたい職業を強制される。
自由に言ってもいいよと言いながら、選択肢はひどく歪んで偏っている。
将来の夢はなんですか?
だから、だから私は──
読んでいただき、ありがとうございました。