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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

まっくろな優しいナニカの話

本当はわかってた死神の話。

作者:

それは不思議で優しくての続きのようなその前のようなそんなナニカ。

単体で読めます。

吾輩は死神である。

名前はまだない。

まだ無いのである。

だから断じて“もけもけ”などではない。

いずれ神様が吾輩に似合う威厳のある名前を付けてくれる。

……きっと。

出世したら、きっと。

……うん、そう、きっと……。


だから今日も働くのである。


死神は総じて影のような姿をしているのである。

なんでも影は恐怖を煽るから、なんて神様がケタケタ笑いながら決めたそうだ。

……それでいいのか?


まあそういう訳なのだが問題は死んだ時の姿という決まりである。

時々可哀想なのはドロドロのデロデロのやつとかな。

吾輩は威厳のある人とは思えないような姿である。

……威厳は無いかもしれないけれど、きっと恐怖は煽れるはずである。

まるめのフォルムに目は2つ。

手足は枝のように細いが決して折れはしない。

…多分、そう見えてるはずなんだよな。

え?そこのお姉さん今吾輩をもけちゃんって呼んだ…?

モケチャンカワイイ?

……悪い気はしないけど却下である。



吾輩は小児担当死神なのである。

なんでもこの姿が大人相手だと舐められる。

との事でって……甚だ遺憾である。

だからそこ!もけもけなどと呼ぶでない!

ってあれ?神様?

いやいやよしてくださいよ!

かっこいい名前期待してますからね!


…はー、これだから他の連中は。

ここでぐだぐだしても仕方がないから仕事に向かうのである。


……ところで“もけもけ”ってどういう意味なの?



今日もカワイソウな子羊を見つけたのである。

ターゲットはそこのベランダに座ってる2つ結びのワンピースの女の子だった。

吾輩を見つけるなり恐怖の悲鳴をあげそうになって、慌てて口を押さえた哀れな小娘である。


吾輩は死神だから、死に触れた者にしか見えないのである。


とりあえず横に座ってみることにした。


ああ、カワイソウに。

顔も身体も痣だらけ。

ニンゲンはどうしてこんなに酷い事ができるのであるか?

吾輩にはわからない世界なのである。


次第に小娘は落ち着いたのか吾輩にぽつりぽつりと言葉を投げかける。


「本当はね、声を出しちゃいけないの。」


なら話していいのか?


「お母さんのお客さんに見つかっちゃいけないの。」


ふむ、よくあるやつだな。

こういう仕事柄このパターンは典型的なのだ。

だから話していけないのは吾輩の方である。


情が、湧いてしまうから。


でも吾輩ができることはほとんどない。

できることと言えば……。


「なぐさめてくれるの?」


こうやって小娘の頭を撫でることだけなのである。

撫でるだけ。

本当はぎゅってしてあげてもいいんだろうけれど、吾輩はダメなのだ。

寒空の下ならなおのこと、ダメなんだろうなぁ。


「本当はね、お母さんともっと一緒にいたいんだ。」


その言葉はすぐ後ろの愚かなニンゲンに直接言ってやれ。

吾輩はその場をそっと離れることにした。


もう吾輩は必要ないんだから。



あー、はいはい、今日もお仕事失敗お疲れ様である。

神様はケタケタ笑って頭を撫でてくれるから多分お叱りはないんだと思う。

でもかっこいい名前が早く欲しいからお仕事頑張るのである。

他のみんなみたいなシュッとしたボディはないけど頑張るのである。

う、羨ましくなんかないんだからな……!



…本当は知っているのである。

どうして吾輩は人の姿ではないなんて。

真っ黒な色は怨嗟の色。

救われなくてはならないのがどっちかなんてわかっているのだ。

何故吾輩が小児担当なのかも。


……子供は残酷なのである。

僕を雪で埋めて殺してしまうくらいには。


でもつい慰めてしまうのである。




だってさ、僕はそんな存在が欲しかったんだもん。

仕方がないよね。

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