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桐島努の能力

「では、桐島。君の能力を見せてくれ」


「えー。マジでやんの? あれ、疲れるんだよなぁ」


 桐島は促され、外に出たが片足に負荷をかけ、立ち姿でヤル気のなさを全面に押し出している。

 頭に付いた糸くずを気にすることのない人間は実に”不潔”という単語がピッタリ。


「別に、私は見たくないんだけど・ね!」


 エリシアさんは、桐島が私と相性が良いと言ったがそれはエリシアさんの思い違いだろう。

 第三界位魔法を弾いたのだってまぐれに決まっている。


 私の嫌味たらしい言葉にイラッとしたのか、桐島は私を睨みつける。

 さっきまでと違い、前髪の奥から覗く眼光は狼のように鋭く、見たもの全てを殺してしまうのではないかと思うほどに殺気が漏れていた。


「な、何______」


部分施錠ロック


 ボソボソと聞き取りにくい声で、桐島は私に言葉を放つ。

 すると、急に体に力が入らなくなり、私は崩れるようにその場に倒れ込んでしまった。


『くっ_______! 何をした!?』


 声を上げようとしたにも関わらず、発した声が出ていない事に気付いた。

 まるで、私の喉の奥に薄い膜のようなものが張り、声が外に出て行くのを阻害しているよう。


 手足を動かそうとしてもピクリともせず、瞬きすら出来ない。

 一体、何がどうなっている?!


「桐島! もう十分よ! テテスを解放して!」


「......はいはい」


 エリシアさんが私と桐島の間に両手を広げ、割って入ると桐島は手懐けられた犬のように両手を挙げた。


「______ッツ! はぁはぁ......」


「テテス!? 大丈夫!?」


「え、ええ。大丈夫です」


 大丈夫と私は見栄を張ったが、誰かにこのように身体の自由を奪われたのは初めてで心臓が速く鼓動しているのが分かる。

 額には汗を掻いており、傍から見れば動揺しているのは一目瞭然だろう。


 一体、奴は何をした?

 桐島に何か言われ、身体が言う事を効かなくなって......。


「ロック・アンロック。それが桐島がゼウス様から受けた寵愛よ」


 ロック・アンロック?

 何そのダサイ名前......。

 私を抱えるエリシアさんはダサイ名前について何も言及せず、桐島の能力について教えてくれた。


「あいつの能力は身体に流れる微弱な電流を止めたり、動かしたりすることが出来るの。急に身体が動かなくなったのもそのせいよ」


「微弱な電流?」


「ええ。私も彼からそれを聞いたから合っているかどうかは不明だけど......」


 この世界でいうところの能力というものには幾つか種類がある。

 火、水、木、雷、氷を操る事が出来る五属系能力。

 精霊や魔獣を召喚使役する召喚系能力。

 回復、身体強化、弱体化を得意とするサポート系能力などなど。


 桐島とやらがゼウス様から与えられた能力は五属系能力の雷を主をしたものだろう。

 だが、雷の能力は身体の中で電力を蓄え、放電するもの。

 相手から発せられる微弱な電力を操るほど便利な力ではない。


 そう考えると、桐島の能力は五属系雷亜種と推測するのが妥当だ。

 転生者に与えられる能力は七系三十種に枝分かれするが稀にどれにも当てはまらない能力があり、我々はそれらを総称して”亜種”と呼ぶ。


 亜種が選択されることは殆どなく、また、強力な力である事が多い。

 桐島の場合はゼウス様から寵愛を受けていることもあり、亜種が選択された事にも何も驚くことはないのだが驚くべき所はそこではない。


「しかし、どうして桐島は守護天使である私に能力を使えるのですか?」


 本来、転生者である者は守護天使に危害を加える事は不可能。

 転生者を管理する者を攻撃出来ては世界を統率する作業に支障を来たしかねないからだ。


 守護天使が能力を付与する際、力と共に制約という呪いもかけるのが通常の流れなのだが......。


「神々の寵愛を受けた者は制約を受けないのかもしれないわ」


「......制約を付与し忘れたという線はないですかね? ゼウス様だし......」


「う、うん。ゼウス様だしね......」


 不穏な空気を漂わせている中、桐島は私達を横目に地面にゴロリと転がり昼寝をし始めた。


「ちょっと! 桐島君! 起きたんだから寝ないでよ!」


「ummm......。あと、5万時間寝かせてくれ」


 エリシアさんは眠りにつこうとする桐島の上半身を揺する。

 良い年してこいつ何やってんだか......。


 こんなにだらしのない転生者を見たのは初めてで私は開いた口が塞がらなかった。


「早く起きて! 自己紹介もまだでしょ!?」


「エリシアがやっといて」


「それくらい自分でやりなさい! これからあなたのペアになるんだから!」


 ん?

 ペア?

 エリシアさんが言った言葉を耳にし、私は背中に変な汗を掻いた。


「あのー。エリシアさん。ぺ、ペアとは?」


「ペアはペアよ。テテスは桐島と一緒に転生者を管理しなさい」


「え、えー!? どうして!? 何で!?」


 私がこんなチンチクリンとペア!?

 ちょっと待って!

 そんなの絶対嫌なんですけど!?


「どうしてってあなたが転生者の管理をまともにしていないからでしょ!?」


「いや! ですけど! 本当! 勘弁してください!!!」


「いい!? テテス、このままだとあなた、守護天使をクビになるのよ!?」


「え? クビ?」


「そうよ! クビと桐島とのペアどっちがマシ!?」


「あ......。う......。ど畜生!!!」


 私は泣いた。

 もう、吐血するんじゃないかと思うほど嗚咽混じりに暫く泣いた。


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