05.連休も大さわぎ その21
ふと、その俺の視線が、その電話線の横でゆれるモノに釘付けになる。
バレンシアの胸だ。俺も男だ、女の体に興味はある。特に、俺の目の前にいるバレンシアは、今うちにいるモノの中でも一番の巨乳なんだから。
「Master、どーこgazing(凝視)しているデースか?」
頭の中で言い訳しているうちに、凝視してしまっていたらしい。バレンシアのちょっと冷たい声が聞こえた。
「Master、suchなactionを、sexual harassment(セクハラ)と言うデースよ?」
顔を上げると、バレンシアがメガネをくいっと上げながら、こっちを真顔で見ているところだった。ってちょっとまて。
「・・・・・・あのな、お前、言うに事欠いてセクハラってなんだよ」
「わからナーイデースか?Japaneseでは、性的イヤガラセと言うデース」
「だからそう言う意味じゃなくて。俺はだな」
「シャーラップ!Sexual harassment(セクハラ)は、targetがfeel unpleasant(不快に感じる)したら、成立するのデース!」
ぴしゃりと言い切られてしまった。セクハラって、そんな簡単に成り立つのか。
「な、なあバレンシア、俺、そんないやらしい目で見てたか!?」
こんなことで訴えられたらシャレにならない。うちのモノたちからいっせいに罵声を浴びてしまう。それだけならまだしも、パソコンにセクハラだなんて、世間的に問題がありすぎる。
頭の中が悪い方向へ向かい始めたとき、突然俺の顔面が、何か柔らかいものにめり込んだ。引き込まれた、と言ったほうが合っているかもしれない。
「もう、Masterはreally really serious(真面目)なんデースからー。It’s a jokeデース、アハハッ」
そして、頭の上からバレンシアのあっけらかんとした声が聞こえる。どうやら、さっきのは演技だったみたいだが、目を開けようにも、俺の頭が後頭部から押さえつけられ、顔が余計にそっちにめり込んでいく。
「Master, how about the touch of my breast(私の胸の感触はいかがですか), a-ha?」
そう、俺が顔を埋めているのは、思わず見てしまっていたバレンシアの胸なのだ。俺は今、そのバレンシアに抱きしめられているのだ。
男として、これはすごく幸せな状況である。他の男が見たら羨ましがるだろうし、俺だってわかった瞬間は、幸せに股間が反応してしまった。
そして、さらに俺の顔はバレンシアの胸に沈んでいく。
「・・・・・・う、く、くるっ、くるひいっ」
い、息が、息ができないっ!顔がめり込んでいる、ということはすなわち、鼻も口も塞がっているということなのだ。
「こら、バレンシア、離せ!苦しい!」
喉はそう叫んでいるんだが、声になって伝わっているのかすら判らない。いやたぶん伝わってない。
「Master, decline(遠慮)しないでくだサーイ。ミーは、Masterのためにaliveしているデスねー」
だって、バレンシアの奴、離すどころか、穏やかな口調でこんなこと言って余計に俺のことを強く抱きしめようとしているんだから。
このままでは、マジで窒息してしまう。覚悟を決めた俺は、俺のことを離そうとしないバレンシアの体を掴んで、無理やりに引き離した。
「はぁ、はぁ、はぁ、し、死ぬかと思った・・・・・・」
やっと開放された俺は、まるでスポーツ直後のように荒れた呼吸を、なんとか宥(なだ)めようとしていた。
「・・・・・・n, m, Master・・・・・・Masterって・・・・・・意外に、aggressive(積極的)、デース・・・・・・」
ふと、バレンシアの歯切れの悪い声に我に返って顔を上げる。そして、目の前の光景を見て、状況を把握するのに数秒かかった。
なぜか、俺の両手の指が、バレンシアの胸にめりこんでいた。どうやら、さっき引っぺがした時にそこに手を当ててしまっていたらしい。
とたんに、顔が熱くなってくる。
「わっ、ご、ごごごごめんっ!」
思わず、手を引っ込めてしまう。まずいぞ、思いっきり掴んだから、今度は本当にセクハラだ。今度は、言い訳のしようがない。
「・・・・・・どうして、apologize(謝る)するデース?」
すると、顔を赤らめたバレンシアがそう聞き返してきた。怒ってないのか?
「え、いや、だって、バレンシアの胸に」
「M、Masterとcommunicateできるナラ、ミーは、not unpleasant(嫌ではない)デス」
な、なんだって!?その瞬間、頭の中にいろいろな妄想が膨らんだ。クリンといいこいつといい、うちの巨乳はそーゆーことに抵抗がないんだろうか。
「だってミーはMasterのPCデスから、Masterにmore and more operateして欲しいデース」
あ、ナルホド。つまりはもっとかまえってことか。まあそう言われてみると、バレンシアは俺より常盤さんに構われているような感じだもんな。
でも、だからって色仕掛けはないだろう。ちょっとグラっと来たけど。
「ただいまー、帰ったよー」
「お帰りなさい。あら、常盤様もご一緒だったのでしょう?」
「ええ、帰り道で偶然会ったのです」
「テルミぃ、椅子はこっちでいいかい?」
「あー、それ紅娘ちゃんのお茶碗?」
そのとき、ちょうどいい、というよりわざわざ合わせたようなタイミングで、外出していたメンバーが帰ってきたらしく、階下が急に騒がしくなった。
それを聞いた瞬間、俺たちは顔を見合わせると、なんかおかしくなって互いに吹きだしていた。
「その話は後にしようか」
「そーデスねー」
そして俺は、今更ながら着替えるために自分の部屋に戻ることにした。
どうも、作者です。
インターネットするつもりが逆に遊ばれております。
いっぺん、こういう形で窒息してみたいものですw
さて、次回ですが。
違う意味で楽しくなるアイテムが投入されます。
徐々にカオスになっていく様をお楽しみください。
では、次回を乞うご期待!