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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
05.連休も大さわぎ
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05.連休も大さわぎ その10

「それにしても、紅娘、だっけ。またえらい思い切ったことやったね」

「ほへ?」

鏡介が声をかけると、紅娘は目をぱちくりさせる。ちなみに、いい加減間違えられるのがうっとうしくなってきたので、今日から鏡介は俺と違う服を着ることにしている。

すると、鏡介はすたすたと壁際に歩いていくとその一角を指差した。

「ここ、見事に跡になっちゃっている」

その壁には、さっき紅娘が投げた鍋が当たった跡が、三日月形にえぐれた傷跡となってくっきり残っていた。

「あ、アイヤ〜・・・・・・」

さすがにまずいと思ったらしい。紅娘はその傷跡の前に膝をついて覗き込んだ。

「上官、昨日引っ越したばかりだというのに、どう始末をつけるつもりなのだ」

一方で、シデンが俺の目の前に仁王立ちになり、その傷がついた壁を指差す。その口調は、なんだか妙に勝ち誇っているように聞こえる。

「考えなく動くような(やから)は迷惑であろう」

「あんまりお前も人のことは言えないと思うんだが」

「な、なんだと!?」

「出て早々鏡介はぶん投げるわクリンの顔に掌底(しょうてい)ぶち込むわヒビキにケンカ売るわ」

「うっ、だ、だが上官ッ、我は、物を壊したり傷つけたりはしていないぞっ!」

「物を壊さなきゃあいいってわけじゃないだろうが」

ここまで言ったら、シデンはうつむいてしまった。いつも偉そうにしているからか、こいつの悔しそうな顔を見るとなんかちょっとだけ気分がいい。

・・・・・・俺って陰険かな。でもまあこの後ぶん投げられるだろうから、それで勘弁してもらおう。

「・・・・・・じっ・・・・・・上官ッ、貴様ぁっ!」

ほら、やっぱり胸倉を掴んで来た。とはいえそのまま投げられるのも(しゃく)なのでちょっと抵抗して腰を引いてみる。

「うわ!?」

「きゃあ!?」

だが、勢いに負けて軽く一歩下がったところ、何か冷たいものを踏んでしまい、足が滑った。おかげで、俺はそのままリビングの床にひっくり返ってしまった。

「ってぇ・・・・・・」

また背中を床にしたたかにぶつけてしまった。こんなことを毎日やっていたら、本気で受身が上手になりそうだ。

ふと、何かが乗っているような感じがしたので、目を下に向ける。そこには、珍しく俺と一緒にコケたらしいシデンが、俺の胸倉を掴んだまま、俺と一緒に床に寝転がっていた。

「・・・・・・っ・・・・・・」

が、なんだか様子がおかしい。どういうわけか、うずくまったままじっとして動かない。小さな声で何か言っているようではあるのだが、小声すぎて聞き取れない。

まさかと思うが、変なところを打ったんじゃないだろうな。

「おい、大丈夫か?」

自分の上に女の子が乗っかっているというこの状態はいささかアレなんだが、いつまでもこの状態で寝そべっている訳にもいかないので、そう声をかけて、軽くたたいてみる。

「!!!!!!」

すると、シデンはなぜか体を強張らせて、よけいに縮こまってしまった。なんなんだ、こりゃ。いい加減下りてくれないと、俺も起き上がれないんだが。

「あのよ、シデン、ちょっと・・・・・・」

「いつまで乗ってんだい」

俺が声をかけようとしたら、いきなりシデンの体が俺の上から離れた。

「ひゃあ!?」

どうやら、ヒビキがシデンの腰帯をつかんで引っ張りあげているらしい。宙吊りになったシデンは、赤い顔で困惑したまま、それでも俺の胸倉をしっかりとつかんでいる。

「わわわ、こら、ひっぱるな、襟が伸びる」

一緒に俺の体まで引っ張られたので思わずそう叫ぶ。すると、それで我に返ったのか、シデンがぱっと手を離した。

あわててそこから這い出し、体を起こすと、ヒビキに腰帯を片腕でつかまれて宙吊りになったシデンが、その状態でヒビキとにらみ合っていた。もともとつり目気味なこともあって襟首を捕まれた猫みたいでかわいくもあるが、その表情は明らかに怒っている。

「・・・・・・ヒビキ、貴様……今日という今日は!」

もともと赤かった顔をさらに赤くした、シデンが叫んだ。

「許さん!」

その瞬間。腰帯を捕まれて宙吊りになっていたシデンの体が動いた。右足を大きく前に振り、体を大きくひねると、まるで魔法のようにそのシデンの足がヒビキの腕に絡みついた。

「んがっ!?」

そう思った瞬間、鈍い音とともにヒビキが間抜けな悲鳴をあげ、前につんのめり、そして本当に倒れてしまった。

そうすることでやっと俺はシデンがヒビキに何をしたのかが判った。

腕ひしぎ十字固めを裏返しにしたとでもいおうか、腰帯をつかんでいた腕を両膝で挟み、そして両方のむこうずねをそれぞれヒビキの後頭部と背中に当てている。しかもご丁寧に足首をクロスさせ、両足と腰だけでヒビキの腕をねじりあげている。そして、引き抜こうにも手に腰帯がからみついており抜けなくなっている。

「いだだだだだっ!」

「どうだっ!」

「ま、まいった、まいったっ!まいったから、離してくれっ」

「だが断る!」

そしてシデンは自分のひざを曲げる。それによってヒビキの腕は逆方向に曲げられる。

「いだだだだだだだっ、こっ、こらてめっ、あだだだだだだっ、やめろって、アームが曲がるっ!」

ヒビキが床をバンバンと叩きながら悲鳴をあげる。ヒビキの馬鹿力でも振りほどけないとはたいしたもんだ、なんて言ってる場合ではない。

全員でヒビキの腕をシデンの足から開放する。

「貴様らあ!離せえぇ!」

「離せじゃないだろ、駄々っ子かお前は!」

「降参した相手に攻撃するのは、ルール違反でしょう!」

なおもじたばたとするシデンを何人がかりで押さえ込んでおとなしくさせる。

「ヒビキさん、大丈夫ですかぁ?」

「氷嚢を用意したわ。痛いのは腕かしら、肩かしら」

「ああ、すまないね。ったくむきになりやがって」

一方で、被害者になってしまったヒビキを気遣う者もいる。

「この家て、ずいぶんにぎやかアルね〜」

「ミーもthink soデース。The day before yesterday(おととい)は、this number of people (この人数)で one-room apartment(ワンルームマンション)に live していたのデ、very very surprise デース」

「……えーと、よく判らないアルけど、ワタシ、この家好きになれそアル」

そして、こんなふうに傍で見ている連中もいる。

横で見ていると面白いかもしれないが、そのとき俺はシデンを抑えていたので、自然とそっちに顔が向いていた。

どうも、作者です。

シデンは相変わらずトラブルメーカーですw

ちなみに、彼女がシデンにかけた関節技。あれは私が想像したもので、実際に効くのかは判りませんがここでは効くということにしてください。


さて、この後どうなるでしょうか。

乞うご期待!

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