05.連休も大さわぎ その8
それに対する反応は様々だった。
「Yeah, Miss Hong-nyang. Nice to meet youネ!」
「一緒にぃ、頑張りましょうねぇ」
「さっきは悪かったね、首根っこつかんだりして」
「もう、ヒビキさんたら早とちりなんですから。セキュリティの見直しまで考えてしまったでしょう」
そんなふうに自分を売り込む奴もいれば。
「お兄ちゃんの浮気者おおおおぉぉぉぉぉ!今度は中国の人なのおぉぉぉ!?」
「将仁くん、和食は口に合わないのかしら?」
「上官っ、昨日といい今日といい、貴様は何故にこうも節操がないのだ!我々では不服であるというのか!」
こんなふうになぜか俺に詰め寄る奴もいる。浮気者とか節操がないとか言われても、この擬人化の力自体、出物腫れ物ではないが、いつどこでどういうきっかけで発動するのか、未だに判らないので俺にもどうしようもない。
「しょうがないだろ、俺にだってコントロールできないんだから」
「なんでよぉ!お兄ちゃんの力なんでしょおっ!なんで発動するのか考えたことないの、お兄ちゃんんんんんっ!?」
「いていててててっ、つねんなつねんなっ!」
はっきり怒った表情のケイが俺の頬をぐにっとつねる。マジで痛いぞ。
「上官、掌には感覚が集中する場所があってな。軽く圧した時は大したことが無いが、力の加減を間違えるとのた打ち回るほどの激痛が走るそうだ。試してみようか?」
「いや、それはマジ勘弁して」
親指の腹で俺の掌をなぞりながら、静かな迫力をにじませてシデンがつぶやく。表情がいつもどおりな分、マジで怖い。
「要望があるなら、はっきり言いなさい。好みに合わないものを出したとあっては、台所を預かるモノとしての沽券に関るから」
だが、一番怖いのはこのレイカのあまりに真剣すぎるまなざしだ。新人が調理器具、台所に関係するモノだってことが、よっぽど気になっているらしい。
「だから何度も言ってるだろ、事故みたいなもんなんだから」
俺には、そうやって宥めるのが精一杯だった。
「まあまあ三人とも、そんな目くじら立てないでさ、これも何かの縁だと思おうよ」
鏡介が助け舟を出してくれるが。
「鏡介お兄ちゃんまでそんなこと言うのこの裏切り者おおおおぉぉぉぉ!」
「鏡介ええええぇぇぇぇ!貴様もそういうことを言うのかあああぁぁぁ!」
どうやら地雷を踏んでしまったらしく、ケイとシデンの2人は今度は鏡介に食って掛かっていった。ここまで増えたら一人ぐらい増えても同じだと思うんだが、ここでは言わないでおく。
というのも。
「怒らないから、本当のことを言いなさい。彼女のことは、本当に故意に呼び出したのではないの?」
「だからさっきから何度もそう言ってるだろ!」
このとおり、今回現れた新顔、紅娘のことを同じ台所用品として一番気にしているレイカに、ほとんど尋問のように詰め寄られているからだ。
全くキャラクターが被らない相手をこれほど警戒するとは、うちのモノたちのポジション争いは俺が想像したよりずっと厳しいものらしい。
そういう意味だと、鏡介はポジションを脅かすモノが同じ鏡しかないからいいのかもしれないなぁ。
「ちょっと将仁くん、聞いているのかしら?」
「うひゃああっ!?」
どうも、作者です。
やっぱりというかなんというか、また大騒ぎになってしまいました。
最後に主人公氏がなにかされていますが、それが何かは次回に判ります。
さて何をされたのでしょうか?
次回も乞うご期待!