05.連休も大さわぎ その3
「ん?」
駅を出て、国道への道を今朝と逆方向に歩いていると、今朝は目に付かなかった店が、ふと目に入った。
リサイクルショップだ。それも、全国展開している、けっこう規模が大きいやつ。
「へー、あんなところにリサイクルショップなんかがあったんだな」
実は俺、こういうリサイクルショップに足を運ぶのがけっこう好きだ。前の持ち主がどんな奴だったか思いを馳せるのが面白いし、普通の店にはないこの雑多さを見ているのもなんとなく楽しいからだ。まあ、来る回数は多いが見るばかりで買わないから、店にとっちゃ嬉しくない客なんだろうが。
というわけで、ちょっと遠回りになるが、俺はその店へと足を向けた。
中に入ると、耳慣れたミュージックが耳に入ってきた。
リサイクルショップにしては大振りな店構えだったが、入ってみるとそれでもけっこう物があふれ返っていた。
古着がずらーりと並んでいたかと思うと、通路をはさんで食器とか陶器がこれまたずらーりと並んでおり、また別の通路を挟んだ向こうには釣り竿とかスキーの板とかゴルフクラブとかが並んでいたり、ママチャリや折りたたみ自転車がおいてあったりする。
「そーいや、バレンシアの奴、ハードディスクが欲しいとか言ってたなぁ」
パソコン本体や周辺機器が陳列された一角に来たときにふとそれが頭をよぎったが、それらしきものは見当たらなかった。そういえば最近テレビでもよく「情報漏洩防止」のためにパソコンやその記憶媒体の処分には気を使っている、と言っていたのでそれが関係するのかもしれない。
「・・・・・・最近のリサイクルショップって、ホントにいろんなもんが置いてあるもんだな」
なんとなく足が止まったのは、なぜか調理器具コーナーだった。包丁とかフライパンとかが置いてある。
そしてその中でも特に目を引いたのが、いわゆる広東鍋と呼ばれる、両把手のでっかい中華鍋だった。そのサイズたるや周りにあるフライパンと比較しても圧倒的にでかく、家庭用というよりは中華飯店とかで大人数に出すチャーハンとか野菜炒めとかを作るときに振るような、普通の主婦では到底扱えなさそうなシロモノだ。しかも、メッキの剥げ具合といい表面の焦げ付き具合といい、相当に使い込んでいそうな感じがする。
横にはそれとセットになっているらしい、やっぱりこれも年季の入った中華お玉が置いてある。
これってやっぱり、どっかの中華飯店ででも使われていたんだろうが、店の命と言っても差し支えないと思う鍋を、なぜこんなリサイクルショップに売らなきゃならなくなったんだろうかとか、どんな料理が作られていたんだろうとか、もとの持ち主に色々と思いを馳せながら、俺はその中華鍋に手を伸ばしていた。
「ずいぶん使い込まれてるなぁ、お前。どんなもん作っていたんだ?」
その瞬間。
きいいいいいぃぃん。
あの耳鳴りが聞こえた。
背筋が寒くなる。またやらかしてしまったのだ。
そして後悔する間もなく、俺の目の前は真っ白になっていった。
どうも、作者です。
主人公君、とうとう屋外でやってしまいました。
さて、どんな子が現れるのでしょうか?
ちなみに、普通のリサイクルショップは、使い古した鍋などの調理器具は引き取らないそうです。
ただ、それを言ってしまうと話が続かないので、この場はめをつむってください。
さて、次回は、今回擬人化させた中華鍋が現れます。
乞うご期待!