05.連休も大さわぎ その1
9月18日 月曜日
今朝は、目覚ましをかけていなかったのに、結構早く目が覚めた。やっぱり昨日早めに寝たからだろうか。
むっくりとベッドから起き上がると、部屋の中の風景が見慣れたものと違う。一瞬焦るが、昨日引っ越したことを思い出して自分を納得させる。
ふと横を見ると、床に布団が敷いてあり、誰かがいびきを立てて寝ている。
鏡介だ。結局、「男だから」ということで俺と同じ部屋に押し込まれてしまったのだ。考えてみれば、お互いにちょっと気の毒な話である。
俺は、鏡介を起こさないようになるべく静かに制服を着ると、鞄を持って静かに部屋を出る。そして腕時計を見ると、いつも家を出る時間にはまだかなり余裕がある。
まあ引越しをして駅2つ分遠くなったから、その分早めに出なければならないのは確かだ。
その俺の耳に、どこからかいびきが聞こえる。ヒビキのそれだ。ヒビキの部屋も2階にあるのだ。あと2階にいるのは、常盤さんと、そこに相部屋になっているバレンシア(なんか早くも常盤さんの助手みたいな扱いになっている)、それとは別の相部屋のシデンとケイだ。
どうもまだ誰も起きていないらしく、2階は薄暗くひっそりとして・・・・・・はいないか。ヒビキのいびきが聞こえるからな。
1階に下りると、テルミがからからと雨戸を開けているところだった。
「おはようございます、将仁さん」
テルミは、本職メイドよろしく、俺のほうを向いて丁寧に頭を下げる。
「おはようさん、テルミ。朝早くから大変だな」
「いえ、これが勤めですから当然でしょう。あ、将仁さん、見たいテレビでも、あるのでしょう?」
「いや、後でいいよ。他のメンバーは?」
「レイカさんが朝食の用意をされていますでしょう。あとの方は、まだ顔をお見せになっていないのでしょう」
うちの大型家電は、本当に働き者だ。こんな朝早くから仕事とは頭が下がる。
「おはよう、将仁くん」
そのレイカが、キッチンから顔を出す。着物の上からエプロンをしているのでなんか明治初期のお給仕さんみたいだが、割烹着だと袖が隠れて、入れた物が出せないので不便なんだそうだ。袖が汚れるんじゃないかとか最初から出しておけばいいのにとか思うが、本人がそれがいいというんだからあえて口にはしない。
「あら?」
そのレイカが、おかしなものを見たような声をあげる。
「将仁くん、制服なんか着て、何かあったのかしら?」
「へ?」
今度はこちらが変な声を出す番だった。制服を着るのなんて、学校へ行くときぐらいしかないと思うんだが。
「何かって、学校にいくんだけど」
「え?」
すると、今度はテルミまで変な声を出した。なんなんだ一体。
かと思うと、今度は女同士で顔を見合わせ、そしてぷっと吹き出した。
「・・・・・・あのさ、俺、なんか変なこと言ったか?」
何がおかしいのかくすくすと笑う二人に、俺は尋ねてみる。なんか間抜けな光景だが、まさかサボり魔だとか思われてるんじゃないだろうな。自慢じゃないが俺は今のところ皆勤賞なんだぞ。
「将仁さん、今日が何月何日の何曜日か、忘れているでしょう?」
「は?今日って、9月18日の月曜日だろ?」
「将仁くん。9月の第三月曜日は、国民の祝日、敬老の日よ?」
「あっ!」
忘れていた。敬う老人がいないとはいえ、休日を忘れるとは、この俺としたことが不覚だ。
「うーん、ここ数日で、覚えなきゃならないことが一気に増えちまったもんでさ」
なんてなことを言ってごまかすが、これじゃ物忘れがひどくなったおっさんだな。
だが、ふとその一言で、俺はあることをひらめいた。
「そうだ、ついでだから今日は学校に行ってみよう」
家政婦大型家電の2人がぽかんとした顔をしている。授業がないのに何をしに行くんだ?といった表情だ。
言っとくが俺はボケたのではない。ちゃんと理由はある。
「いやな、学校に着くまでどのぐらいかかるのか、シミュレートしようかと思ってさ。それが判れば、俺も明日から何時ごろ起きればいいかもわかるし」
すると、頭のいい2人はすぐに納得の表情になった。
「じゃあ、将仁くん、お昼はどうする?必要ならお弁当を作るけれど」
「いや、いいよ。行って帰ってくるだけだから、遅くとも昼過ぎには戻るだろうし」
「そう、判ったわ」
そして、レイカは再びキッチンに戻る。
「では将仁さん、朝食ができるまでもう少しかかるでしょうから、着替えてきたほうが良いでしょう」
「ん、判ったよ」
テルミに促され、俺は持って降りてきた鞄を再び持ち上げて、2階の俺の部屋へと戻った。
どうも、作者です。
いよいよ5日目の始まりです。
そして今日もまた平穏無事には終わりません。
というわけで、期待してください。
感想などありましたら是非とも足跡を残していってください。
それでは、次回も乞うご期待!