04.引越しは大変だよ その19
「あ゛〜〜〜〜」
ざばーっと湯をあびたあとで、俺は湯船に身を沈めた。自分で想像した以上に疲れていたんだろうか、四十過ぎのおっさんが出すような音が口から出ていた。
今、この家にいるメンバーの約半分は風呂に入らない、というか入れない。電化製品なので、湯につかった瞬間ショートしてお陀仏なんだそうだ。女の子なんだから湯船につからないまでも体を洗うぐらいはしてもいいと思うんだが、考えてみるといつも同じ服装だから、「脱げない」のかもしれないなー、なんてことを考えてしまう。
うちのモノで、違う服装をしたことがあるのは、俺の分身とでも言うべき鏡介と、最初から服を着ていなかったクリンぐらいだ。どっちも風呂回りにいた連中だ。
でも、クリンは今は(理由は不明だが)テルミと同じメイド服だよな、ってことは、テルミはどこかに予備の服を持っているということなんだろうか。そうなると他の連中も換えぐらい持っているのかもな。
なんてなことを考えているうちに体が温まったので、体を洗うために一旦浴槽から出る。そして椅子に座ると、タオルにボディーソープをつけてあわ立てる。
お風呂スポンジがあんなことになってしまったのでタオルを使うことにしたんだが、やっぱりどうも泡立ちがよくない。しかし、どうもうちのモノたちは縄張り意識が強いようで、みんながみんな「自分ができること」は「自分がする」と主張するのだ。だから、さっきバレンシアが出てきた時には、共通する能力があるケイとテルミがあんなに強く主張したらしい。
だから、新しいスポンジとかを買うわけにもいかず、結局今まで何度か風呂で使ったことのあるタオルを使うことにした。
この場はこういうもんだと割り切って、そのタオルを顔に当ててごしごしとこする。なんか、引っ越した初日の一番風呂というのは気分がいいもので、いつもより念入りに体を洗ってしまう。
んで、一通り洗い終わったのでタオルを置き、手探りで洗面器を探す。
むにゅ。
「きゃん♪」
ん?なんだ今のは?手が、何か柔らかいモノを掴んだぞ。
軽く指を動かすと、その柔らかいモノは強くもなく弱くもない力で俺の指を押し返してくる。
「うふふっ、将仁さんったら、手つきがいやらしいですよぉ」
こっ、この声はっ!?
顔を洗っている途中だったというのに俺は目を思いっきり開けてしまった。そして、一瞬だけ開いたその視界に、忘れられない光景をみてしまった。
大きくて丸くて柔らかい肌色の物体に、俺の指がめり込んでいる。そしてその上に、見覚えのあるほわわんとした笑顔が乗っている。
「どぅわぁっ!?」
その直後、俺は思いっきり飛びのいていた。そして、濡れた床に脚を取られ、俺は頭を風呂桶に突っ込んでしまった。
どうも、作者です。
やっぱり静かには終わりませんでした。
風呂のシーンお入れた時点で予想していたかもしれませんがw
さて、主人公の貞操はどうなるのか!?
乞うご期待!