04.引越しは大変だよ その17
で、その後することがなくなった俺は、そのまま下りてきたが、あの2人はそれから一向に下りてこない。いくらトイレが2階にあるからと言っても、部屋から出た様子もないのはやっぱり気になる。
「データのインプットでしたっけ、まだやってるんスかね?」
「さっきテルミが危機感を煽ったから、がんばっちゃってるんじゃないか?」
「がんばるのはいいですけどぉ、無理はしないで欲しいですねぇ」
そんな話をしていると、とんとんとんと階段を下りてくる足音がした。
そして、2人がリビングに現れた、が。
「大丈夫?気分はどう?」
「Solly、うー、I feel bad headache(すっごく頭痛い)・・・・・・」
バレンシアは、常盤さんに肩を支えられながら入ってきた。もともと色白な顔が若干赤くなっており、そしてまるで重病人のようにふらふらで足元がおぼついていない。
「Fuuuuu・・・・・・」
そしてバレンシアは、今日買ってきたばかりの椅子に大儀そうに腰を下ろし、大きく息を吐いた。
その元気のない姿を見たうちのモノ軍団とりゅう兄が、何事かと駆け寄っていく。
「おい、大丈夫か?」
「Hmmmmmm・・・・・・overheatしたデース・・・・・・」
「オーバーヒートぉ?」
「そうなのよ」
付き添いの常盤さんが、うちわを持ってぱたぱたとあおいでいる。
なんでも、バレンシアの奴は、常盤さんが何度か休もうと言ったにもかかわらず、全然休んでいないらしい。それで、あと少しで終わる、というところで頭から湯気が出てきたので、危険を感じた常盤さんが無理にでも休ませようと下に連れてきたらしい。
本人の口からは聞いていないが、さっきテルミにしてやられたために対抗意識を燃やしていたんだろう、とは常盤さんの弁だ。
「オーバーヒートか、ありゃ確かに辛いもんなぁ」
ヒビキが、りゅう兄のほうを見ながらそんなことを口にする。りゅう兄は苦笑している。どうやら、りゅう兄はヒビキをオーバーヒートさせたことがあるようだ。
「オーバーヒートということは、冷せばよいのでしょう?」
テレビ画面を収納したテルミが、ワンテンポ遅れてやってくる。
「冷した手ぬぐいでも貰ってこよう」
そして、シデンがすっと立ち上がって洗面所へ走っていった。
「テルミぃ、お前も先輩なんだから、後輩の事をいじめるなよな?」
「ううぅぅぅ、でも、私だって、不安だったんですよぅ・・・・・・自分の役割を奪われるのは、耐え難いことでしょう」
テルミが、珍しく弱気な発言をした。どうやらさっきのアレは、テルミのテレビとしてのアイデンティティーを示したかったための行動だったようだ。
なんか、そういうところでむきになるこいつらが、余計にかわいく見えてしまった。
どうも、作者です。
バレンシアがオーバーヒートしました。
機械のオ-バーヒートが人間にとってどんな感じになるのか想像してみたんですが、やっぱりしんどいものなんでしょうね。
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次回も、乞うご期待!