04.引越しは大変だよ その11
「Hi, Master!」
光の向こうから、また知らない女の子の声が聞こえた。
目を開けると、まだほとんど使っていないノートパソコンが、光といっしょに消えていた。そしてそのかわりに、俺の机の上に、知らない女の子が腰掛けて、大げさに手を振っていた。
どこかの高校の制服みたいな、袖は白くて体の部分が水色のブレザーに、白地に黒のチェックの膝丈ぐらいのスカートを身に着け、明るい金髪の巻き毛が印象的な、そしてどう見ても日本人じゃない顔つきの女の子だ。ふちのない丸いメガネをしており、胸元には、電源スイッチみたいなマークがついたブローチをつけている。
「Nice to meet you! I’m glad to see you,Master!」
そしてその子は、なんともネイティブな発音でそんなことを口にした。
「は?」
いきなり英語で言われると言葉が出てこない。俺がぽかんとしていると、その外人っぽい子はひょいと机から飛び降りて、今度はちょっとたどたどしい日本語で話しかけてきた。
「ハジメましテ!オ会いできテ嬉しいデス、マスター!」
「・・・・・・まさか?」
「イエス。I’m your PCデース。My best regards(よろしく), Master!」
アメリカのメーカー製だからなんだろうか、その子は英語交じりの言葉を口にしながら、満面の笑みを浮かべ、俺の手を強引に両手で取ってぎゅっと握ってくる。
なんか仕草が大げさなんだが、これもやっぱりメイドインUSAだからなんだろうか。
と、そこまで近づかれて、その子は顔だけじゃなくて首から下も日本人離れしているのが判った。とにかく、着ているブレザーがはちきれそうなほどに胸がでかいのだ。そのわりにウエストなんかは結構余裕があるみたいだ。
「Master、アナタ、とてもとてーも、薄情デス」
それに圧倒されていると、その子は握ったままの手を胸元までもちあげ、寂しそうな、それでいて責めるようなまなざしで俺のことを見つめてきた。
「へ?」
「ミーのこと、ちょっとoperate(操作)して、あとはずーっとneglect(放置)しまシタ。ミーは、very very lonely(とてもとても寂しい)だったのデス」
そして、その子はいやいやするような仕草をする。
「いや、それは、その・・・・・・ごめん、えーと、I'm sorry.」
確かに、電気屋の店員に薦められたとはいえ、欲しいと思って買ったのは俺だし、使わないでお蔵入りさせてしまったのも俺だ。お蔵入りさせていたモノ自身から責められるとは思わなかったが、悪いのは確かに俺だから言い訳はできない。
だから、俺は素直に頭を下げた。
どうも、作者です。
陽気なスーパーコンピューターの登場です。
パソコンの擬人化というのはけっこう見かけますがなぜかロリっぽいのが多いので、奇をてらって巨乳にしてみましたw
こんなのがマイPCだったらメールもろくにできなくなりそうです。
さて、出てきた子にいきなりひどい人といわれてしまった主人公ですが、これからどうなるのでしょうか?
乞うご期待!