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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
01.それは一本の電話から始まった
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01.それは1本の電話から始まった その6

どのぐらい経っただろう。

ゆさゆさ、ゆさゆさ。

「お兄ちゃん、お兄ちゃんってば」

「起きてください、将仁さん。いつもはもっとお付き合いして下さっているでしょう」

誰かが、俺をゆすっている。

朝か?と思ったが、そんなはずはない。だって寝ていないんだから。

だが、目を開けるのはちょっと怖い。なにしろ、聞き覚えのない声が、増えているんだから。

「あのー、将仁さん、起きてくれないと、いつもご覧になっているテレビ番組が、始まってしまいますでしょう」

その聞き覚えのない声が、俺に話しかけてくる。

テレビ、と聞いて、思わず俺は目を開けてしまった。そして、逃避しようと思った矢先に、新たな現実を突きつけられてしまった。

髪を左でまとめた女の子と、黒ぶちの眼鏡をかけた女の人が、目と鼻の先で俺の顔をのぞいていたのだ。

髪をまとめた子は、さっきまで俺の横にいた、自分は携帯だと言う女の子だ。でも、こっちの人は?

そして、その時になって俺は、60インチあるあのでかいプラズマテレビが、跡形もなく消えていることに気づいた。

俺は、さーっと血の気が引いていくような気がした。テレビが、なくなってしまったのだ。

「わあぁぁぁっ、て、テレビが、テレビがあぁぁっ!」

跳ね起きてそのテレビがあったところに向かうが、テレビは確かになくなっていた。見えないだけかと思ったが、手を伸ばしても何も触れない。本当になくなっている。

「どっ、どこだっ、盗まれたのかっ!?」

「あのー、心配してくれるのは嬉しいのですが、私ならここにいるでしょう」

うちのテレビにしゃべる機能なんてなかったような気がするが、おそるおそる振り向く。

そこには。さっき目にした、黒縁の眼鏡をかけた女の人が、手を前に合わせて立っていた。髪はセミロングで、大人びてしっかりした感じの人だ。

そして、その服装を見て、俺は目をしばたかせてしまった。

ぶっちゃけて言うと、すねあたりまである黒いマントを羽織ったメイドさん、とでも言うべき姿だったのだ。メイド服の丈も同じぐらいで、よくテレビで見るなんちゃってメイドのそれよりだいぶ長い。

黒マントがなかったら、完全に本物だ。

「私を呼び出して下さいまして、ありがとうございます」

そのメイドさんは、丁寧に頭を下げてくる。しかし、俺、メイドなんか雇った覚えはないんだが。

「き、き、君は?」

「はい、将仁さんご愛用の、ミツイシ社製HDD内装60インチハイビジョンプラズマテレビでしょう」

「お兄ちゃん、学習能力ないよぉ?」

しれっと答えるそのメイドさんの横で、携帯の子が仁王立ちして眉をハの字にする。

「て、テレビって、どこがテレビなんだよっ!?」

思わず叫ぶ。携帯の子はまだいい。携帯を連想させる格好しているから。でもこのテレビだと言う人は、どう見てもテレビだとは、しかもあのでかい60インチのプラズマテレビとは思えない。

「そう仰いましても、私はテレビとして作られたのですから、テレビですとしか申し上げられないのでしょう」

「しょ、しょ、証拠見せろ、証拠ッ」

しどろもどろになりながら、俺はそのメイドさんを指差して言い放った。

「承知いたしました。それでは将仁さん、その場所を空けてもらえないでしょうか?」

だが、そのメイドさんはあっさりと俺の要望を受けいれた。

俺と入れ替わるように、そのメイドさんがテレビのあった所に来ると、四つんばいになって台の後ろにある空間に頭を突っ込んでごそごそとやり始めた。何をしているんだろうか?

「えーと、アンテナ線はどれでしょう・・・・・・あ、これでしょう」

ああ、アンテナ線を探していたんだ。確かにそれが無きゃテレビは写らんわな、ってそんなことを心配しているんじゃない。

なんとなく、手品を見ているような気分になってくる。

「えーと、これから、繋ぎますので、もう少し待っていただけないでしょうか?」

そして立ち上がったメイドさんは、テレビ台の上に乗るとこっちを向いた。

「そんな時間かかるのか?」

「だ、大丈夫、接続は、すぐ、できますから」

そう言いながら、メイドさんは後ろ手で何かごそごそと始めた。なんとなくだが、顔がちょっと赤いような気がする。

「では、つ、繋ぎますっ!」

そして、繋ぐ準備ができたらしく、そのメイドさんは赤い顔をさらに赤くし、裏返った声で宣言する。

な、何だ、繋ぐのって、そんなに大変な作業なのか?

「くうぅっ」

そのメイドさんは、テレビ台の上で、一瞬何かに耐えるような顔をした。なんというか、服は全部着ているのに、妙にエロい光景だ。

・・・・・・あれ?そういえば、アンテナ線、どこに、繋いでいるんだ?

「わ、わ、わぁ・・・・・・」

携帯娘も同じことを考えたのだろうか、顔を赤くしながらその行為を見ている。

「はあっ、はぁっ、つながり、ました、何チャンネルが、いい、でしょう?」

一瞬少しのけぞってから、メイドさんは大きく息を吐いた。

「あ、じゃ、じゃあ、いつもの、8チャンネルを」

「は、はい、では、参りましょう」

まだ若干息を切らしながら、メイドさんは俺の言葉に頷く。

そして改めて台の上に立つとマントの裏に手を引っ込め、そしてそのマントの前を合わせる。メイドさんのエプロンとかメイド服とかが、全部黒いマントに包まれた。

「では、どうぞ!」

そして、メイドさんの合図とともに、そのマントが、まさにバッという音がしそうなぐらいに勢いよく、大きく左右に広げられた。

俺は、そこに冗談のような光景を見た。

メイド服の上にマントを羽織っていたんだから、マントを広げたらメイド服があるはず。だが、実際は、マントの下は、全く何もなかった。そしてそのかわりに、広げたマントの内側から60インチのプラズマディスプレイが目の前に現れたのだ。

「勝ち抜きリレークイズ、スタート!」

その画面に、そう言いながらクイズ番組の司会者がこっちめがけて手を差し出している姿が目いっぱいに映し出される。

「どうでしょう?言ってくだされば、画面サイズも音響も調整できますよ?」

そして、メイドさんはその画面の上に腕を載せて、テレビ画面の上から楽しそうにこちらをのぞいている。なるほど、頭だけじゃなくて肩ぐらいまでは出るんだ。・・・・・・なんか変な感じだが。

「んー、バスをもう少し利かせてくれないかな?」

「はい」

メイドさんはそこで手を合わせ、指をくるくると動かす。すると、音響が明らかに変わった。

「わぁ、おねぇちゃんすごーい!」

携帯娘は素直に感心する。

「いえいえ、これが私の役目ですから」

テレビメイドさんはちょっと照れたようなしぐさを見せた。

どうも、作者です。

スーパーメイドテレビの登場です。

彼女は、これから真田家のハウスキーパーとして家の中を切り盛りしていくことになります。

萌えやメイドに関心が無いひとでも、こんなテレビだったら欲しがると思いますw

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